2012 Fiscal Year Annual Research Report
新規セレン化合物ポリセレノジチオールの活性開拓およびセレン代謝ネットワーク解明
Project/Area Number |
23790161
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
植田 康次 名城大学, 薬学部, 助教 (30351092)
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Keywords | セレン / 酸化ストレス / グルタチオン / チオール |
Research Abstract |
「新規セレン(Se)化合物“ポリセレノジチオール”の活性探索とSe代謝ネットワーク解明」を主題とした研究の2年目最終年度において、生体内主要チオールであるグルタチオン(GSH)との反応で生じる第一次代謝中間体“セレノジグルタチオン(GS-Se-SG)”に注目し、Se代謝およびSe化合物の生体影響の解明に取り組んだ。微量(数uM)のGS-Se-SGが細胞内濃度(数mM)のGSH存在下において精製DNAに対し酸化的損傷を引き起こした。この反応は他のチオール化合物(システインなど)でも同様であったが、酸化型チオール(GSSG)や他の還元性物質(NADH, NADPH)では観察されなかった。スカベンジャーによる抑制実験から酸化損傷の活性種としてヒドロキシルラジカルが示唆されたが、われわれは今回、このラジカルが、通常必須とされる金属イオンに依存しない反応機序により生成することを明らかにした。GS-Se-SGの還元によりスーパーオキシドアニオンラジカルが発生するが、これがGSHのラジカル化を介して過酸化水素と反応することでヒドロキシルラジカルを生み出す機構が考えられる。生体内において金属イオンの動態は厳密に制御され、遊離の反応性イオンはほとんど存在しないとされている。今回の結果は、「抗酸化分子であるGSHがSeによる酸化損傷に加担する」という逆説的な障害機序を示唆しており、新しい生体内酸化ストレス誘導機構を提案するものである。上述のGSラジカルや、GS-Se-SGの代謝課程で生成するGS-SeHは、タンパク質性チオール基に対しても高い反応性を有することが予想される。この反応によるタンパク質「(セレノ)グルタチオン化」は細胞障害性もしくはSeトランスファー機構に関与する可能性が考えられ、今後の課題として重要である。
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Research Products
(8 results)