2011 Fiscal Year Research-status Report
ES/iPS細胞を用いた幹細胞化学発がんメカニズムの解析
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23790162
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
岡本 誉士典 名城大学, 薬学部, 助教 (50512323)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 幹細胞発がん |
Research Abstract |
生体内にはわずかに組織幹細胞が存在し,自己複製と分化を繰り返して生体の恒常性を維持している.近年,がん組織においても増殖・分化するがん幹細胞が発見され,その起源の一つとして幹細胞のがん化が挙げられる.本研究では,強力な発がん物質イニシエーターとして知られる7,12-ジメチルベンズ(a)アントラセン(DMBA)がマウス胚性幹(mES)細胞に対して引き起こすDNA損傷や異物代謝酵素誘導,未分化状態への影響を検討した.また,これらの影響の程度をマウス胎児性線維芽細胞(MEF)と比較することにより未分化細胞特有の応答をについて検討した.DMBA処理により両細胞ともDNA付加体量が増加し,それはMEFにおいて顕著であった.化学物質非存在下により,Cyp1a1発現は両細胞で同程度だが,Cyp1b1はMEFにおいて高発現であった.また,DMBA処理によりSox2発現・ALP染色陽性細胞が減少したことから,mES細胞が分化傾向を示していることが確認された.一方,3-メチルコラントレン処理では,Cyps発現誘導は確認されたが,DNA付加体は検出されず,mES細胞の未分化状態に影響を及ぼさなかった.したがって,未分化状態の破綻にはDNA損傷が寄与していると考えられる.以上の結果から,mES細胞は発がん物質の標的となること,DNA損傷により分化誘導されることが示唆された.この分化誘導は,異常な幹細胞を排除するという幹細胞防御機構の一つであると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度には、主にDNA付加体の測定とその分子メカニズムの解析、メチル化シトシン量を測定する高感度分析法の確立とその適用について実施してきた。これらの点については、大きく進展しているといえる。一方、ルシフェラーゼ発現マウス胚性幹細胞(Luc-ES細胞)の樹立に関しては、本学における遺伝子組み換え実験規定の大幅な改定と重なったため、新規の遺伝子組み換え実験に対する承認審査が滞っていた。したがって、平成23年度内でのLuc-ES細胞の樹立には至っていない。以上を総合し、本課題はおおむね予定通り進行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
達成度の項でも述べたように、平成23年度内でルシフェラーゼ発現マウス胚性幹細胞(Luc-ES細胞)の樹立には至らなかった。そのため、細胞樹立およびin vivoイメージングのために見積もっていた実験動物やイメージング試薬などの費用を平成24年度に持ち越すこととなった。したがって、今後の研究推進方策としては、早急にLuc-ES細胞を作製し、in vivoイメージング法を用いた幹細胞のがん化を評価するための実験系を確立する。また、それと並行して、ヒト幹細胞での化学発がん物質に対する応答を評価するために予定している女性ヒトiPS細胞の樹立も進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費は、主に消耗品に使用する。その内訳として、実験試薬、放射性試薬、細胞培養試薬、プラスチック消耗品、および実験動物などが挙げられる。また、得られた研究成果を国内・国際学会で報告するとともに、学術論文へ掲載するための費用としても使用する。上記は、研究費申請当初の配分計画に沿った内容で見積もっている。
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Research Products
(10 results)