2011 Fiscal Year Research-status Report
亜鉛に応答した遺伝子発現変化に対するエピジェネティック制御機構
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23790163
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
木村 朋紀 摂南大学, 薬学部, 講師 (70340859)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | MTF-1 / 亜鉛 / メタロチオネイン |
Research Abstract |
本研究課題では、亜鉛に応答した遺伝子発現についてエピジェネティックな制御機構の存在を明示するとともに、その機序を解明することを目的としている。本年度は、(1)エピジェネティックな影響を与える環境要因・条件を見出すため、リンパ肉腫細胞株P1798細胞を用いた。本細胞は、メタロチオネイン-I (MT-I)遺伝子のプロモーター領域のクロマチン構造が密であるため、定常的なMT-I遺伝子発現が抑制されており、なおかつ、亜鉛によるMT-I誘導が認められないことが知られている。そこでまず、一過性にルシフェラーゼレポータープラスミドをP1798細胞に導入し、外来性のMT-Iプロモーターを介した発現について、定常的な発現および亜鉛による誘導が認められることを確認した。その後、1ヶ月間にわたって高濃度の亜鉛を含む培地で細胞を培養し、MT-I遺伝子発現量を調べた。しかしながら、内因性のMT-I遺伝子の発現量は、この培養により変化することはなかった。エピジェネティックな影響を与える環境要因・条件は、本研究課題を継続するにあたって必須の情報であるため次年度も条件の探索を継続する。次に、(2)MT-Iプロモーターのクロマチン構造変化に関与する因子を明らかにするため、クロマチンリモデリングファクターであるBRG1およびBRMを欠失している細胞株、SW13細胞を用い、これらファクターの強制発現がMT遺伝子発現に与える影響を検討した。その結果、これらリモデリングファクターを発現させることでMT発現量が増加することを明らかにした。次年度は、この時のMTプロモーター領域のクロマチン構造の解析を行い、リモデリングファクター発現とクロマチン構造との関係を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エピジェネティックな影響を与える環境要因・条件は、本研究課題を継続するにあたって必須の情報であり、いまだに明らかにできていない点は問題ではある。しかしながら、クロマチン構造と転写速度に関する解析、クロマチン構造変化の持続性に関する解析、クロマチン構造変化に関与する因子に関する解析については、順調に成果が出つつあることから、全体としては、おおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
SW13細胞を用いた解析により、BRG1およびBRMがMTF-1の関連する転写にかかわっていることを示唆するデータが得られていることから、SW13細胞でのクロマチン構造変化に関する解析を重点的に行う。また、今まではマウスMT-I遺伝子に焦点を当て、その解析を行ってきたが、今後は、他のMTF-1支配遺伝子(MT-II、ZnT1など)に関しても解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
MTF-1によるクロマチン構造変化機構について、これにかかわる因子を調べるために、siRNAを用いた包括的リモデリングファクターノックダウンと、MTF-1と亜鉛依存的に複合体を形成する因子の同定のため、2次元電気泳動・ゲル内消化およびLC-MS/MS解析によるタンパク質同定のために研究費の多くを使用する。また、研究成果を積極的に公表するため、英文校閲、学会参加にも研究費を使用する。
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Research Products
(5 results)