2012 Fiscal Year Annual Research Report
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23790174
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
吉門 崇 独立行政法人理化学研究所, 杉山特別研究室, 研究員 (70535096)
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Keywords | 薬物誘発性胆汁うっ滞 / トランスポーター / 薬剤性肝障害 / 胆汁酸依存性胆汁 / 胆汁酸非依存性胆汁 / 胆汁ミセル |
Research Abstract |
本研究では、臨床において深刻な副作用となり得る薬物誘発性胆汁うっ滞の発症機構を解析することを目的とした。肝細胞毛細胆管膜には胆汁成分の排出トランスポーター(BSEP, MDR3, MRP2等)が発現しているが、薬物による機能変動は胆汁組成に異常をもたらし、薬物誘発性胆汁うっ滞の原因になると考えられている。まず、臨床において胆汁うっ滞を誘発する薬物を見出すために、厚生労働省の薬物性肝障害マニュアルに基づき、胆汁うっ滞型肝障害の症例が多く報告されている薬物の順位付けを行い、上位の薬物を野生型ラットに投与して胆汁成分の変動を解析した。抗血小板薬チクロピジンは、胆汁中に必須の成分であるリン脂質の分泌を著しく低下させた。同時に、グルタチオン抱合型チクロピジン代謝物の顕著な胆汁分泌が見られたが、MRP2欠損ラットにおいては見られず、またリン脂質分泌の低下も観察されなかったことから、これらの現象へのMRP2の関与が示唆された。さらに、リン脂質の分泌を担うMDR3の発現系を用いた実験系において臨床濃度のチクロピジンによる阻害作用が見られなかったこと、また、肝障害マーカーの上昇が野生型ラットでは見られたがMRP2欠損ラットでは見られなかったことから、チクロピジン代謝物の胆汁排泄によって胆汁ミセル形成が滞り、リン脂質の分泌が低下したことが示唆された。本研究ではさらに、胆汁成分の排出トランスポーターと薬物取り込みトランスポーター(OATPs)との共発現系を構築し、極性が高いため細胞内に入りづらい胆汁うっ滞性薬物の評価を行った。また、より生体に近いと考えられるサンドイッチ培養肝細胞を用いて胆汁うっ滞性薬物による輸送・発現量の低下や毒性を評価する系を構築し、更なる解析を進めている。
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Research Products
(3 results)