2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23790185
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
阿部 真治 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (00403717)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 腫瘍特異的免疫療法 / HM1.24 / ADCC / 抗体 / トランスレーショナルリサーチ |
Research Abstract |
悪性胸膜中皮腫は治療抵抗性の難治癌であり、治療成績向上のためには新規治療法の確立が必須である。近年臨床現場では様々な癌に対して腫瘍特異的免疫療法が行われており、既存の治療法では治療困難であった症例に対しても著明な効果をあげている。腫瘍特異的免疫療法では有効な治療効果を得るうえで、標的とする癌抗原の選択が最も重要である。HM1.24 (CD317) は種々の悪性腫瘍に特異的に発現する抗原性タンパク質であり、腫瘍特異的免疫療法への応用の可能性が報告されている。しかし、これまでに悪性胸膜中皮腫における HM1.24 抗原発現と腫瘍特異的免疫療法への応用については検討されていない。そこで特異的抗体を用いて実験したところ、ヒト悪性胸膜中皮腫細胞株において HM1.24 が発現し、高発現も存在することが明らかとなった。また、ヒト悪性胸膜中皮腫組織においても HM1.24 の 発現が認められた。さらに HM1.24 特異的抗体の抗腫瘍効果を評価するため、抗体依存性細胞障害(ADCC; antibody-dependent cell cytotoxicity)および補体依存性細胞障害活性(CDC; complement dependent cytotoxicity)の測定を行ったところ、HM1.24 陽性の悪性胸膜中皮腫細胞株に対して HM1.24 特異的抗体は ADCC 活性および CDC 活性を有することが示された。この結果より、HM1.24 を標的とした腫瘍特異的免疫療法が悪性胸膜中皮腫に対する有効な新規治療法となる可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画において、本研究ではヒト悪性胸膜中皮腫組織における HM1.24 の発現を確認すること、HM1.24 特異的抗体の抗腫瘍活性を明らかにすることが平成23年度の目的であった。まず、ヒト悪性胸膜中皮腫組織における HM1.24 の発現に関する検討では、ヒト悪性胸膜中皮腫組織アレイを用いて免疫染色を行うことにより、HM1.24 抗原の発現が検出された。次に抗 HM1.24 抗体の抗腫瘍効果について明らかにするため ADCC 活性ならびに CDC 活性の評価を行ったところ、HM1.24 特異的抗体により ADCC および CDC の誘導が認められた。以上のように現時点において研究計画はおおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に得られた結果を基にして、継続してヒト臨床組織における HM1.24 の発現、および抗 HM1.24 抗体の ADCC 活性の評価を行う。ADCC 活性はマウス脾細胞、もしくは健常成人の末梢血より単離した単核球をエフェクター細胞として用いる。採取されたエフェクター細胞と抗 HM1.24 抗体を放射性同位元素で標識した HM1.24 抗原陽性ヒト悪性胸膜中皮腫細胞と一定時間共培養し、上清中に放出された放射性同位元素を測定する。次にマウス悪性胸膜中皮腫モデルを用い、抗 HM1.24 抗体の抗腫瘍効果について検討する。悪性胸膜中皮腫細胞を移植した SCID マウスに抗 HM1.24 抗体を投与し、腫瘍サイズの変化や生存率について評価を行う。動物モデルを用いた実験であり、悪性胸膜中皮腫細胞株の種類によって異なる結果になると考えられるため、複数種類の悪性胸膜中皮腫モデルを用いることを予定している。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は研究計画に従い、組織アレイや細胞培養関連試薬、動物の購入を行い、in vitro および in vivo 実験を進めていく。また、平成23年度は研究成果が得られた時期が遅かったため、期間中に成果発表を行う機会が限られており、繰り越しが生じた。次年度は平成23年度に得られた成果も踏まえて、研究成果の発表ならびに報告を積極的に行っていく。
|
Research Products
(3 results)