2011 Fiscal Year Research-status Report
平滑筋細胞増殖由来血管系レドックス恒常性破綻を抑制する動脈硬化症予防薬の探索
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23790190
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Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
神谷 哲朗 岐阜薬科大学, 薬学部, 助教 (60453057)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | EC-SOD / FCS / MEK/ERK |
Research Abstract |
本研究では、新規動脈硬化症予防薬の提示を最終目的とする。そこで、平成23年度ではin vitro実験系を用いて、ウシ胎児血清(FCS)処理法による血管平滑筋細胞(VSMCs)増殖過程における酸化ストレス防御酵素(EC-SOD、他のSOD)ならびにgrowth factorおよびcell cycle関連遺伝子のmRNA発現変動をRT-PCR法を用いて網羅的に解析した。VSMCsをFCSにて処理した結果、FCSの濃度依存的にEC-SOD mRNA発現量が減少することを見出した。しかし、他のSODアイソザイムのmRNA発現量に変化は認められなかった。一方、EC-SODタンパク質量をELISA法にて測定した結果、FCS処理した細胞内のEC-SODレベルは減少したものの、細胞外のEC-SODレベルは増大した。また、細胞内外を合わせた総EC-SODレベルは増大した。また、growth factorの一種であるHB-EGFおよびcell cycle関連遺伝子の一種であるcyclin D1のmRNA発現量もFCSの濃度依存的に増大した。次に、FCS処理細胞におけるMAPK系の関与をウエスタンブロット法により検討した結果、MEK/ERK系の活性化が認められた。さらに、MEK/ERK系の阻害剤であるU0126またはPD98059でVSMCsを前処理した結果、FCS処理によるEC-SOD mRNA発現量の減少は有意に抑制された。以上の成果から、FCS処理によるVSMCs増殖過程において、MEK/ERKシグナルによりEC-SOD発現量が調節されていると考えられた。また、平成23年度の研究成果により、in vitro実験系の実験方法・実験条件の確立と共に、ターゲット遺伝子であるEC-SODの発現調節機構を解明する上で重要な知見を得ることが出来たと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度ではin vitro実験系の実験方法・実験条件の確立と共に、本研究のターゲット遺伝子であるEC-SOD発現変動機構の一部(MEK/ERK系の関与)を解明することが出来た。また、FCS処理によるEC-SOD発現調節機構におけるgrowth factorならびにcell cycle関連遺伝子の関与に関しては、HB-EGFおよびcyclin D1 mRNA発現量がFCSの濃度依存的に変動することも確認できたため、来年度以降の検討にもスムーズに取りかかることが出来るものと考える。しかし一方で、FCSとは異なるVSMCs増殖誘導剤としてlysophosphatidic acid添加の実験を遂行したが、EC-SOD発現量に変化は認められなかった。また、EC-SOD発現調節機構に及ぼすgrowth factorならびにcell cycle関連遺伝子のノックアウトの影響を確認するには至らなかった。以上より、一部期待した結果および予定通りの研究を進捗することは出来なかったが、来年度以降の研究を遂行する上で基礎となる実験系の確立は出来たため、現在まではおおむね順調に当初の予定通りに研究を遂行出来ていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究成果より、FCS増殖方法としてはFCSに統一するものの、前年度同様にVSMCs増殖過程におけるEC-SOD発現調節機構を標的とした新規動脈硬化症予防薬の提示を最終目的とする。そこで、平成24年度では前年度で認められたgrowth factorならびにcell cycle関連遺伝子によるEC-SOD発現調節に及ぼす影響を各遺伝子関連シグナルの阻害剤ならびにsiRNAを用いることにより、FCS処理によるEC-SOD発現調節機構を検討する。また、動脈硬化症発症・増悪過程において、単球由来マクロファージの関与の重大性が指摘されているが、VSMCsとマクロファージとの共培養系におけるEC-SOD発現変動の詳細は解明されていない。そこで両細胞の共培養系を用いて、前年度の研究において発現量の変動ならびにEC-SOD発現制御への関与が認められたgrowth factorならびにcell cycle関連遺伝子、TNF-aなどの炎症性サイトカインに着目しクロストーク機構の詳細を検討する。さらに、VSMCs増殖過程におけるEC-SOD発現低下を抑制する化合物を手がかりに、新規動脈硬化症予防薬の探索を行う。細胞増殖抑制作用を有することが報告されており、抗ガン剤としての有用性が期待されている4-phenyl butirateおよびトリコスタチンAを候補化合物として新規動脈硬化症予防薬の探索を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度と同様に、実験を遂行するために必要となる設備・備品は研究室ならびに大学の共同実験施設の現有品を用いるため、次年度の研究費は培養細胞、培養器具、試薬類、実験成果を発表するための学会出張費(旅費)の他、通信費、英語論文校閲費、投稿料として使用する。
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Research Products
(5 results)