2011 Fiscal Year Research-status Report
アンギオテンシン受容体阻害薬による活性化ヒト間葉系幹細胞による心臓再生医療
Project/Area Number |
23790197
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
沼澤 洋平 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (60414059)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 間葉系幹細胞 / アンギオテンシン |
Research Abstract |
本年度はヒト間葉系幹細胞における心筋への分化誘導過程においてレニンアンギオテンシン系が関与していることを解明した。まずin vitro でヒト間葉系幹細胞と胎児マウス培養心筋細胞との共培養を行い、心筋細胞を誘導することに成功した。その過程においてレニンアンギオテンシン系に関連する薬剤がどのように影響するか確認した。予備実験においてアンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)の前投与によりヒト間葉系幹細胞の心筋分化誘導効率が2~5倍程度増加する事を確認した。次にレセプターに注目し、アンギオテンシン受容体サブタイプ1(AT1R)阻害薬としてARBを、サブタイプ2阻害薬としてPD123319を用いて心筋分化誘導改善作用がみられるかどうか観察した。ARB前投与により心筋分化誘導効率改善がみられるのに対し、PD123319の前投与ではプラセボ群と比較して差がなかった。上記よりARBの効果はAT1Rを介していることが推測された。ARBは同時にperoxisome proliferators-activated receptor-γ(PPAR-γ)活性化作用があり、PPAR-γにも同様に心筋誘導効率改善作用があるため、ARB の作用がPPAR-γ受容体選択的阻害薬であるGW9662 によって消失するか否かを観察した。ARBの効果はGW9662にて阻害されず、やはりAT1Rを介した機序によるものと考えられた。次にARBと同系統の薬剤であるアンギオテンシン変換酵素阻害薬の前投与でも、ARBより高濃度で投与することで同様の心筋分化誘導効率改善作用があることが判明した。また我々が使用したヒト骨髄間葉系幹細胞の培養液中に大量のアンギオテンシンIIが分泌されていることをELISAにて確認した。上記よりヒト間葉系幹細胞の心筋分化誘導過程においてレニンアンギオテンシン系が大きく関与していることをつきとめた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的はヒト間葉系幹細胞による再生医療の効果を改善するために、ヒト間葉系幹細胞を生体外でアンギオテンシン受容体阻害薬(ARB)での若返りによる分化能向上を生じさせることで臨床再生医療の効果を増進する」と言う全体構想の中で、ARB 前処理したヒト間葉系幹細胞が心臓再生医療において有効である事を示すことである。現在まで、研究実施計画にそっておおむね計画通りに研究が進行している。ヒト間葉系幹細胞の心筋分化誘導過程において各種レニンアンギオテンシン系関連薬がどうのように影響するかをみることで、ARBの心筋分化誘導効率改善作用についての作用機序があきらかになりつつある。今後さらに心筋分化誘導におけるレニンアンギオテンシン系の影響についての詳細なメカニズムを明らかにし、臨床応用に向けた基盤作りを行っていく。
|
Strategy for Future Research Activity |
心筋分化誘導におけるレニンアンギオテンシン系の影響についての詳細なメカニズムを明らかにし、臨床応用に向けた基盤作りを行って行く。in vitroのヒト間葉系幹細胞と胎児マウス培養心筋細胞との共培養の系においてさらに各種のレニンアンギオテンシン系関連薬剤をもちいてその影響を調べ、ARBの心筋分化誘導効率改善作用についての作用機序をより詳細に解明して行く。さらにARB 投与前後のヒト間葉系幹細胞の遺伝子プロファイルの比較を行い、心筋誘導因子を確認する。これらの研究を通じてARB の心筋誘導効率改善のメカニズムを解析し、その結果から心筋誘導法の最適化を行う。in vivoではARB を添加して培養したヒト骨髄間葉系幹細胞をヌードラット心筋梗塞モデルに移植し、その効果を確認する。拒絶反応の少ないNude Rat で慢性心筋梗塞モデルを作製し、ARB 非処理ヒト骨髄間様系幹細胞と、ARB 処理ヒト骨髄間葉系幹細胞群に分ける。心筋梗塞作製2週間後に開胸し心筋梗塞巣へ細胞を移植する。移植後2週間及び4週間で心機能改善効果を、心電図、血圧、左心室収縮期圧、拡張末期圧、心臓超音波検査、血液ガス所見、BNP 採血などを行い2群間で比較する。さらに得られた心筋組織から心筋梗塞部位・梗塞周囲・正常領域の免疫組織学的検討を行い、骨髄間葉系幹細胞由来心筋細胞の有無・CD31/von Willbrand 因子による新生血管数の測定、最後にタネル法によるアポトーシス細胞の定量評価を行い、心筋再生・反応性血管新生の程度・パラクラインによる抗アポトーシス効果の程度を観察比較する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度から445,967円の繰り越し金が生じた。この未使用金額の発生は効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度の消耗品の購入に充当させる予定である。平成24年度に関しては上記研究計画に基づき、実験用機材、試薬、動物購入費用等を中心に研究費を使用する。また研究成果発表や論文校閲費用等に使用する。
|
Research Products
(2 results)