2012 Fiscal Year Annual Research Report
抗癌剤の奏効率向上を目指した膵癌新規治療標的へのアプローチ
Project/Area Number |
23790198
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
西 弘二 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (00398249)
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Keywords | ゲムシタビン / メタボローム / 核酸代謝 / EMT |
Research Abstract |
膵癌治療の第一選択薬として用いられるゲムシタビンの詳細な作用機序解明を明らかにするためにゲムシタビン曝露後のヒト膵癌細胞株Miapaca-2のメタボローム解析を行った。その結果、ゲムシタビンの主要な作用箇所である核酸代謝について、リボヌクレオチド還元酵素阻害によるdCTPの減少が観察された。加えて、CTPの減少およびUTPの上昇も観察されたことから、ゲムシタビンの標的としてUTPからCTPへの反応を触媒するCTP合成酵素の関与が示唆された。また、リボヌクレオチド還元酵素およびCTP合成酵素特異的阻害剤であるHydroxyureaおよび3-deazauridineを用いて、メタボローム解析を行ったところ、3-deazauridineとゲムシタビンの核酸代謝阻害様式が極めて類似していたことから、ゲムシタビンの標的は、CTP合成酵素であることが確認された。さらに、ゲムシタビン感受性の異なる2種類のヒト膵癌細胞株(Miapaca-2およびAsPC-1)のCTP合成酵素発現量を確認したところ、CTP合成酵素はゲムシタビン感受性にも関与していることが示唆された。 次に、8種類のヒト膵癌細胞株のE-カドヘリンおよびビメンチンの発現をウエスタンブロッティングで確認し、内皮系および間葉系細胞4種類ずつに分類し、メタボローム解析を行った。その結果、内皮系細胞群および間葉系細胞群においては、それぞれイノシンおよびアデニンのレベルが高いことが観察された。そのため、イノシンやアデニンが内皮系および間葉系細胞特性の維持に関与している可能性が考えられた。内皮ー間葉系転換(EMT)は薬剤耐性を引き起こすことが知られているため、これらの代謝物がゲムシタビンやその他の抗癌剤耐性に関与している可能性がある。さらに、ゲムシタビンの奏効率を向上させるためには、これらの代謝物の存在も考慮する必要があるかも知れない。
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