2012 Fiscal Year Annual Research Report
胎盤内分泌機能と協調する薬物の胎盤関門透過性制御の分子基盤
Project/Area Number |
23790199
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
登美 斉俊 慶應義塾大学, 薬学部, 准教授 (30334717)
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Keywords | 胎盤関門 / 内分泌 / トランスポーター |
Research Abstract |
エストリオール(E3)は妊娠時の主要なエストロゲンであり、ヒト妊娠末期の尿中E3値は非妊娠時の数百倍にも達する。妊娠時E3はsyncytiotrophoblastで合成され、その前駆体16α-hydroxy dehydroepiandrosterone sulfate (16α-OH DHEAS)の90%は胎児由来である。[3H]16α-OH DHEASの取り込みを胎盤関門モデルであるJEG-3細胞において解析したところ、取り込み活性が示された。本取り込みはDHEAS、Estrone-3-sulfate (E1S)、bromosulfophthalein (BSP)による阻害を受けた一方、tetraethylammonium (TEA)では阻害を受けず、胎盤関門側底膜に発現するSLC22A11の性質と一致した。[3H]16α-OH DHEASのSLC22A11への基質認識性は不明であったが、SLC22A11を一過性に発現させたCOS-7細胞における[3H]16α-OH DHEAS取り込みはmock細胞と比較して有意に高く、そのKm値は7 μMであった。OAT4発現細胞における[3H]16α-OH DHEASの取り込みはDHEAS、E1S、およびBSPの存在下で有意に低下したが、TEAでは阻害されず、JEG-3細胞における[3H]16α-OH DHEAS取り込みの性質と一致した。さらに、JEG-3細胞を16α-OH DHEAS存在下で培養することで最終産物であるE3の分泌量が著しく上昇し、本分泌はBSPの共存下では減弱することも示された。以上から、薬物トランスポーターとしても知られるSLC22A11は16α-OH DHEASの取り込みを通じてE3合成に関与することが示唆され、胎盤内分泌機能においてトランスポーターによる胎盤透過性制御が重要な役割を果たすことが明らかとなった。
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