2011 Fiscal Year Research-status Report
薬物動態制御タンパク質の発現・機能変動おける酸化ストレス応答性miRNAの役割
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23790206
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Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
池村 健治 金城学院大学, 薬学部, 助教 (70513935)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | マイクロRNA / P-glycoprotein / 肝虚血再灌流障害 / 酸化ストレス / 転写後調節 |
Research Abstract |
我々は、これまで肝移植時に問題となる肝虚血再灌流(I/R)障害が薬物体内動態に与える影響について検討し、その結果、肝I/R障害時に、小腸上部特異的にCYP3A活性及びP-糖蛋白質(P-gp)の発現量が亢進し、免疫抑制薬シクロスポリンAの経口バイオアベイラビリティーの顕著な低下を惹起することを明らかにした。また、その調節因子を検索したところ、小腸上部のCYP3A mRNAの発現量は胆汁中リトコール酸の上昇に起因するが、Mdr1aおよびMdr1b mRNAの発現量には肝I/R障害の影響は認められず、リトコール酸とは異なる何らかの転写後調節機構の関与が示唆された。近年、新たな転写後調節因子として、機能性小分子RNAであるマイクロRNA(miRNA)が注目されている。miRNAは、標的とするmRNAの3'-非翻訳領域(3'-UTR)に結合することによって、mRNAの分解や翻訳を制御することが知られている。本研究では、肝I/R障害後の小腸におけるmiRNAの発現変動と、小腸上皮細胞におけるP-gpの転写後調節におけるmiRNAの役割について検討を行った。肝I/R障害による小腸miRNA(475種類)の発現変動をmicroarray法で解析した結果、Sham群に比べ10種類のmiRNA発現量が顕著に減少し、4種類のmiRNAが顕著に増加していた。さらに、この14種類の中からmiRanda標的予想プログラムを用いMDR1 mRNAの3'-UTRを標的とするmiRNA候補を抽出した。その結果、1種類のmiRNAのみがMDR1 3'-UTRに相補的配列を有していた。現在、このmiRNAがP-gpの発現量・機能に及ぼす影響について検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画では、培養細胞に酸化ストレスを曝露させ、microarray法によりmiRNA 発現プロファイルを解析し、CYP3A 及びP-gp に標的配列を有する酸化ストレス応答性miRNA の同定までを予定していた。実際には、平成25年度に実施予定の肝虚血再灌流(I/R)障害モデルラットを用い、in vivoにおける酸化ストレス応答性miRNA によるCYP3A 及びP-gp の発現変動に関する検討を先行させ実施している。現時点で、肝I/R障害時の小腸におけるmiRNA発現変動をmicroarray法によりスクリーニングし、MDR1 mRNAの3'-UTRを標的とするmiRNAを特定し、このmiRNAがP-gpの発現量・機能に及ぼす影響について検討を行っている。併せて、培養細胞に酸化ストレスを曝露させ、特定したmiRNAによるP-gp の発現調節機構についての検討も進めている。以上から、本研究は、おおむね順調に進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト胎児腎由来のHEK293細胞を用い、MDR1 mRNAの3'-UTR配列を導入したレポータープラスミド(50 ng)と、miRNA前駆体(10, 30, 50 nM)またはVehicle(Control)をHEK293細胞にコトランスフェクションし、luciferase assayによりmiRNAのMDR1 3'-UTRに対する作用の評価を行う。さらに、miRNA阻害剤(アンチセンスRNA)を培養ヒト腸上皮細胞Caco-2細胞に導入後、P-gp/MDR1の発現量をWestern Blot法及びRT-PCR法によって確認し、輸送活性をP-gpの基質薬物であるRhodamine123(Rho123)の細胞内蓄積量により評価する。酸化ストレスがmiRNAを介したP-gpの発現・機能に及ぼす影響を解析するため、Caco-2細胞に酸化ストレス発生物質である過酸化水素(0, 10, 50, 100, 200 µM) を24時間曝露後、各細胞を回収し、miRNA マイクロアレイ(miRXplore マイクロアレイキット、Miltenyi Biotec 社)により、酸化ストレスにより発現が変動したmiRNA を特定し、in vivoのマイクロアレイの結果と比較検討する。さらに、P-gp/MDR1の発現量をWestern Blot法及びRT-PCR法によって確認し、輸送活性をP-gpの基質薬物であるRho123の細胞内蓄積量により評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
細胞サンプルからのTotal RNAの抽出、逆転写反応、RT-PCR反応に費用な試薬・消耗品等に25万円、miRNA マイクロアレイ(miRXplore マイクロアレイキット、Miltenyi Biotec 社)解析費用として30万円、研究成果を報告するため、第27回日本薬剤学会(神戸)、第27回日本薬物動態学会(千葉)、第133回日本薬学会(横浜)への旅費代に15万円を使用予定である。
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Research Products
(7 results)