2012 Fiscal Year Research-status Report
薬物動態制御タンパク質の発現・機能変動おける酸化ストレス応答性miRNAの役割
Project/Area Number |
23790206
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Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
池村 健治 金城学院大学, 薬学部, 助教 (70513935)
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Keywords | マイクロRNA / P-糖蛋白質 / 肝虚血再灌流障害 / 転写後調節 |
Research Abstract |
我々は、肝虚血再灌流(I/R)障害時に小腸のP-糖蛋白質(P-gp)発現量が上昇し、MDR1 mRNAの変化を伴わないことを明らかにしてきた。近年、機能性小分子RNAであるmicro RNA(miRNA)は、mRNAの3'-非翻訳領域(3'-UTR)に結合することにより、mRNAからの蛋白質への翻訳を制御し、様々な蛋白質の転写後調節因子として注目されている。本研究では、小腸に発現するmiRNA群に着目し、肝I/R後のP-gp発現変動におけるmiRNAの役割とその調節機構について詳細な検討を行った。肝I/Rによる小腸miRNA(475種類)の発現変動をmicroarray法で解析し、一定以上発現量が変化したmiRNAの中からin silico法によりMDR1 mRNAの3'非翻訳領域(MDR1-3'-UTR)を標的とするmiRNAを抽出した。その結果、miR-145のみがMDR1-3'-UTRに相補的配列を有していた。MDR1-3'-UTR配列を導入したHEK293細胞を用いてluciferase assayを行ったところ、miR-145を過剰発現させた場合にluciferase活性が顕著に低下し、miR-145結合部位の欠損変異体ではluciferase活性の低下が認められなかった。Caco-2細胞にmiR-145阻害剤を作用させたところ、P-gp発現量は約1.6倍、P-gpの基質薬物であるRhodamine 123輸送活性は約2.8倍まで上昇したが、MDR1 mRNA発現量は不変であった。以上より、miR-145はMDR1-3'-UTRに直接作用し、P-gpの翻訳を抑制する結果、P-gp発現量と機能を低下させる新たな調節機構が明らかとなった。本機構は、肝I/R後の小腸上皮細胞に発現するP-gpの発現・機能上昇にも深く関与するものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度までの研究計画では、培養細胞に酸化ストレスを曝露させ、microarray法によりmiRNA 発現プロファイルを解析し、CYP3A 及びP-gp に標的配列を有する酸化ストレス応答性miRNA の同定までを予定していた。実際には、平成25年度に実施予定の肝虚血再灌流(I/R)障害モデルラットを用い、in vivoにおける酸化ストレス応答性miRNA によるP-gp の発現変動に関する検討を先行させ実施した。その結果、P-gpの発現量を調節するmiRNAを同定し、さらなる機能解析により、miR-145はMDR-1-3'UTRに直接結合し、P-gpの発現・活性を低下させる新たな転写後調節機構を発見した。研究成果を一流国際誌であるMolecular Pharmacologyに公表した。現在は、培養細胞に酸化ストレスを曝露させ、miR-145によるP-gp の発現調節機構に関わる酸化ストレスの役割についてさらに検討を進めている。以上から、本研究は、おおむね順調に進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
Caco-2細胞に酸化ストレス発生物質である過酸化水素(0, 10, 50, 100, 200 µM) を24時間曝露後、各細胞を回収し、Total RNAを調製し、RT-PCR解析によりMDR1 mRNA及びmiR-145発現量を測定する。さらに、Western Blot法によりP-gpの蛋白発現量を測定する。さらに、さらに肝I/R障害モデルラットを用い、臓器中及び血中miRNAをmicroarray法により網羅的に解析し、薬物体内動態と臓器・血液中miRNA発現量の関係性を解析し、バイオマーカーとしての有用性を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
細胞及び組織サンプルからのTotal RNAの抽出、逆転写反応、RT-PCR反応に費用な試薬・消耗品等に55万円、miRNA マイクロアレイ(miRXplore マイクロアレイキット、Miltenyi Biotec 社)解析費用として60万円、研究成果を報告するため、第28回日本薬剤学会(名古屋)、第28回日本薬物動態学会(東京)、第134回日本薬学会(熊本)への旅費代に15万円を使用予定である。
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