2011 Fiscal Year Research-status Report
環境要因を考慮したエピジェネティック変異診断による癌化学療法の個別化
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23790210
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Research Institution | Himeji Dokkyo University |
Principal Investigator |
高良 恒史 姫路獨協大学, 薬学部, 教授 (00329939)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | エピジェネティクス / 癌 / 抗癌剤感受性 / 個別化治療 |
Research Abstract |
近年、ゲノム塩基配列以外にも個人差として遺伝的に伝達されるエピジェネティクスが注目されている。すなわち、癌細胞の抗癌剤感受性に相違を認める要因の一つとして、エピジェネティック変異の影響も十分に考えられる。そこで、エピジェネティック変異情報に基づいた癌化学療法の個別化を目指して、由来臓器の異なるヒト癌細胞株のDNAメチル化度と抗癌剤感受性の関連性について検討した。 実験には、37種のヒト由来癌細胞株(肺癌、乳癌、子宮頸癌、肝臓癌、腎臓癌、大腸癌及び食道癌)を使用した。ゲノムDNAのメチル化度は、5-メチルシトシン抗体を用いたELISA法により定量した。また、癌細胞のシスプラチン(CDDP)、パクリタキセル(TXL)及び5-FUに対する感受性はWST-1法により測定し、50%増殖阻害濃度(IC50値)を求めた。 その結果、様々な臓器由来の癌細胞におけるメチル化度は1.63~31.8%(平均10.4%)であり、細胞間の相違を認めた。メチル化度は肝臓癌細胞において12.6%と最も高値を示したものの、由来臓器による有意な相違を認めなかった。従って、ゲノムワイドでのメチル化異常は、組織特異性の低いことが示唆された。一方、細胞間におけるメチル化度の相違が認められたことから、これらを利用した抗癌剤感受性予測の可能性が考えられた。しかしながら、ゲノムDNA全体のメチル化度とCDDP、TXL及び5-FUに対するIC50値に関連性は認められなかった。同様に、由来臓器別のメチル化度と抗癌剤感受性の関連性は、大腸癌細胞においてメチル化度とTXL感受性に相関傾向が示されたものの、その他において相関性は観察されなかった。従って、ゲノムDNA全体のメチル化度は抗癌剤感受性の規定因子として大きく関与しないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、研究で使用する細胞数を20種類程度としていたたが、研究成果の普遍性を高めるために、当初研究計画の約2倍の種類を用いて研究を実施した。また、初年度に、今後測定に使用するサンプルの回収をほぼ完了することができた。そのため、研究の進展具合は、当初の予定と若干相違しているものの、全体の研究計画としてはおおむね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に、今後測定に使用するサンプルの回収作業をほぼ完了できているため、これらの遺伝子変異及び遺伝子発現量解析を速やかに実施できるよう、多検体処理に有用な試薬・器具類を用いて研究を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の研究計画通り、遺伝子変異及び遺伝子発現量解析用の試薬・消耗品に使用する。なお、遺伝子変異及び遺伝子発現量に関するデータ量が膨大になる場合は、初年度に予定していた解析用パソコンを購入する予定である。
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Research Products
(3 results)