2011 Fiscal Year Research-status Report
PET分子イメージング技術を用いた薬物の消化管吸収過程の解析と吸収率予測法の構築
Project/Area Number |
23790214
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
高島 忠之 独立行政法人理化学研究所, 分子プローブ動態応用研究チーム, 研究員 (80469907)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 分子イメージング / 消化管吸収 / PET |
Research Abstract |
組織中薬物濃度に基づいたin vivo PET解析により、様々な性質をもつ薬物の消化管吸収動態を明らかにすることを目的とし、本研究1年目の平成23年度に行なった、医薬品のアナログであるPETプローブの評価結果の進捗について報告する。平成23年度に評価するPETプローブとして、新たにプローブ合成に成功した[11C]dehydropravastatinを選択した。絶食時、無麻酔時において、正常ラットに[11C]dehydropravastatinを経口投与した後、放射能の体内動態をPET画像評価により解析したところ、放射能は胃内に分布後、速やかに消化管内の下部に移動しているダイナミック画像、加えて放射能の一部は肝臓に移行している画像を得ることができた。この時、血中放射能濃度はPETスキャン終了時まで、一定濃度を保ったまま低い値を示していた。一方、[11C]dehydropravastatinを静脈内投与した際には、放射能は肝胆系輸送により速やかに排泄され、薬物トランスポーター欠損動物、特定の薬物トランスポーター阻害剤等を用いたPET試験において、OATPsやMRP2などのトランスポーターの寄与が高いことがわかっている。このため、消化管吸収過程においても、これらの特定薬物トランスポーターまたは同ファミリーが関与している可能性が考えられる。今後、経口投与試験におけるトランスポーター阻害剤の併用試験等を行い、消化管吸収動態の変化をPET画像解析により明らかにしていく予定である。また現在、新たな特定トランスポーター基質となる医薬品や、非吸収性マーカーのPETプローブ化に着手しており、各PETプローブ化が確立した後、これらのプローブの消化管吸収の評価を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
消化管吸収性が良好、中程度、悪い性質を示す、各カテゴリーのPETプローブを少なくとも1つずつ用い、消化管吸収の解析を行なうことを当初は計画していたが、PETプローブの入手が困難であり、またこのような性質をもつ特定の薬剤のPETプローブ化を平成23年度に新たに行なうことが不可能な状況となった。一方、特定の薬物トランスポーターの基質であるPETプローブの入手が可能となった。このため、消化管吸収において、特定の薬物トランスポーターの寄与が示されている薬物において、消化管吸収挙動をPET画像解析により明らかにすることを目的とし、膜輸送における薬物トランスポーターの寄与が高いPETプローブを用いた消化管吸収挙動の解明へとシフトした。全期間である2年間において最低3種類のプローブを評価する予定のうち、現時点の平成23年度終了時においては、1種類のプローブ評価にのみ留まっていたため、予定よりやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の試験において、PETを用いた評価法により、これまでに報告がなされている[18F]FDG、[11C]Telmisartanにおける消化管吸収動態の基礎データ以外に、新たなPETプローブ[11C]dehydropravastatinにおける消化管吸収動態についても、評価が可能であることが明らかとなった。今後、[11C]dehydropravastatinの消化管吸収における、薬物トランスポーターの寄与を明らかにするため、経口投与PET試験時において、薬物トランスポーター阻害剤を併用し、消化管吸収動態の変化をPET画像解析により明らかにしていくことを、1つ目の計画として考えている。加えて、現在、新たな特定トランスポーター基質となる医薬品や、非吸収性マーカーのPETプローブ化に着手しており、PETプローブ化が成功した際には、これらのプローブの消化管吸収の評価を進め、様々な性質をもつPETプローブにおける消化管吸収挙動を、組織中放射能濃度を用いた指標により比較解析することを、2つ目の計画として考えている。得られた成果がまとまった際には学会発表、論文投稿にて報告する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、当初の予定通り、新規プローブ合成、PET試験、代謝物分析に関わる消耗品、動物試験に関わる麻酔、動物、手術器具等の物品の購入に予算の半分程度を使用することを考えている。その他、学会発表、論文投稿用に、残りの予算の半分程度の使用を計画している。
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