2011 Fiscal Year Research-status Report
ウイルス挿入変異法で同定された新規がん関連遺伝子Jmjd5の機能解析
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23790220
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
石村 昭彦 金沢大学, がん進展制御研究所, 助教 (80375261)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 細胞増殖 / 遺伝子発現 / ヒストンメチル化修飾 / マウス胚発生 |
Research Abstract |
レトロウイルス挿入変異法の結果得られた、ヒストン脱メチル化酵素をコードするJmjCファミリー遺伝子の1つJmjd5の生体内における機能およびがん発症との関わりを調べるために、Jmjd5変異マウスを用いた機能解析を行い、以下の研究成果をDevelopment誌に報告した。(1) Jmjd5 nullマウスの表現型解析の結果、欠損マウスは著しい成長阻害を伴い、胎生11日目前後に胚性致死となった。また、Jmjd5 hypomorphic変異MEFを用いた解析結果も同様に細胞増殖能の著しい低下が観察された。(2) 胚発生期に関わる細胞周期調節因子の網羅的PCRスクリーニングの結果、欠損胚と変異MEFどちらにおいても、p21の発現が有意に上昇していることを発見した。p21特異的siRNAを用いたノックダウン解析を行ったところ、p21ノックダウン変異MEFの細胞増殖能が、未処理の変異MEFと比較して有意に回復した。よって、Jmjd5は細胞自律的にp21の発現を制御することで、正常胚細胞の増殖を調節していることが強く示唆された。(3) p21の発現亢進が、主要なp21発現誘導因子の1つであるp53の発現量変化に起因しているかを検討した。その結果、p53 mRNAと蛋白質の発現上昇は、欠損胚および変異MEF、どちらでも認められなかった。またp53応答性ルシフェラーゼ解析の結果も同様に、p53転写活性の変化が観察されなかった。従って、欠損胚および変異MEFでのp21発現増加は、内在性p53経路の活性化に依存しない可能性が示唆された。(4) ChIP解析の結果、変異MEFにおけるp21遺伝子座上のヒストンH3K36メチル化修飾が有意に上昇していることを見出した。 以上より、Jmjd5はp21遺伝子座上のヒストンメチル化修飾の性状を負に制御することで、胚細胞の正常な増殖に貢献していることが証明された
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2011年度、研究代表者はJmjd5 nullマウスの表現型解析を中心的に行ってきたが、その研究成果は主要な発生生物学専門誌の1つであるDevelopment誌に掲載され、生体内におけるJmjd5の機能を初めて報告することができた。従って、達成の自己評価を「おおむね順調に進展している」という評価に定めた。
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Strategy for Future Research Activity |
上述したように、Jmjd5は細胞増殖制御因子の1つとして胎児の生存に必須な遺伝子である事をDevelopment誌に報告したが、死亡原因と考えられるp21遺伝子をJmjd5と同時にノックアウトしても胎児の発育不全は解消されなかった。よって胎児の生存に重要なp21以外の標的遺伝子の存在が、強く示唆されている。2012年度以降は、Jmjd5によるp21以外の遺伝子発現制御機構を明らかにするために、Jmjd5標的遺伝子のスクリーニングやJmjd5結合蛋白質の同定に取り組む予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2012年度、消耗品として細胞培養関連試薬、分子生物学的実験関連試薬(ChIP実験や定量PCRなど)、免疫学的実験関連試薬(組織染色や免疫沈降実験など)を購入予定である。また、当研究費をマウス飼育費や学会参加費にも充てる予定である。
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Research Products
(5 results)