2012 Fiscal Year Annual Research Report
ウイルス挿入変異法で同定された新規がん関連遺伝子Jmjd5の機能解析
Project/Area Number |
23790220
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
石村 昭彦 金沢大学, がん進展制御研究所, 助教 (80375261)
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Keywords | 遺伝子発現 / 細胞増殖 / 発生・分化 / がん |
Research Abstract |
ウイルス感染発癌モデルマウスを利用したスクリーニングの結果、エピジェネティック制御因子JmjCファミリーと癌発症との関係性を報告し、その分子機序を報告してきた。その1つJmjd5は最近、研究代表者らが作製した遺伝子改変マウスを用いた解析の結果、胎生11日目前後に著しい成長阻害と血管新生異常を呈して胚性致死となった。胚性致死の原因が血管新生異常に起因するかどうかを検討するために、血管組織特異的Jmjd5欠損マウスを作製し、その表現型を観察した。その結果、この変異マウスは正常に発生が進んだことから、致死の原因は胚細胞の増殖異常に起因する可能性が示唆された。細胞増殖抑制因子の網羅的発現解析の結果、Jmjd5はその1つであるp21の発現を制御し、胎児の発育を細胞自律的に調節する重要な因子であることが明らかとなった。実際、Jmjd5とp21のダブル変異マウス由来の胎児繊維芽細胞では、Jmjd5変異マウス由来の胎児繊維芽細胞で観察された細胞増殖能の低下が有意に回復していた。一方、Jmjd5とp21のダブル欠損マウスを作製したところ、Jmjd5欠損マウスで観察された表現型異常が回復していた。しかしこの表現型異常の回復は非常に限定的な効果であることから、胎児の生存に重要な「p21以外のJmjd5標的遺伝子」の存在が遺伝学的解析によって新たに示唆された。興味深いことにJmjd5変異細胞では、p21の主要な発現調節因子の1つである内在性p53遺伝子の発現誘導を介さずに、p21のみならず複数の既知のp53下流標的遺伝子の発現が上昇していた。さらにJmjd5とp53のダブル変異マウス由来の胎児繊維芽細胞の増殖能は、野生型細胞と同じくらいに回復していた。以上より、Jmjd5がp53シグナル全般を調節する新しい調節因子の1つである可能性が示唆された。
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Research Products
(2 results)