2011 Fiscal Year Research-status Report
3-D上皮細胞組織化モデルにおける動的細胞分化転換と形態制御の研究
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23790221
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
酒井 克也 金沢大学, がん進展制御研究所, 助教 (10523318)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 形態形成 / 浸潤 |
Research Abstract |
3-D培養における上皮細胞組織化は組織化・再生の制御機構を理解する上で好適なモデル系である。本研究では、3-D培養における上皮組織化の利点を生かし、一過的・動的な浸潤性形質の獲得とその終息に着目し、このような個々の細胞群を可視化・標識化する手法と分子細胞生物学的手法を用いることで、組織形成の時空間的制御とその分子基盤を明らかにすることを主たる目的とした。 本年度は、1) マウス乳腺上皮細胞の上皮形態形成過程における浸潤性(間葉系)分化転換細胞のGFP標識化による細胞分化転換の可視化 2) ヒト中皮腫細胞における3-D浸潤性獲得の分子基盤の理解を試みた。 その結果、1) 乳腺上皮細胞のin vitro組織化において多倍体染色体を有する細胞の多くが間葉・幹細胞で発現される遺伝子を発現していることを観察した。さらに、4倍体細胞の形成とその後の動態・増殖能を解析した結果、意外にも自然発生した4倍体細胞が2倍体細胞と同等に多数回の分裂能を有することを見出した。この結果から細胞増殖は核の倍数性に影響されないことが示唆され、生体内ではがん細胞に特徴的な染色体の異数性や不安定性につながる4倍体細胞の出現そのものを低く抑える仕組みが機能していることが考えられた。2) 中皮腫細胞の3-D浸潤には腫瘍細胞膜のMT1-MMPによって活性化されるMMP-2が必要であること、3-D培養で選択的におこるMMP-2の活性化にはMT1-MMPの細胞膜局在の増加によって引き起こされることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画はおおむね順調に進展しているが、若干の実験手技の見直しが必要であった。当初予想していなかった現象の観察から、当初の想定以上に研究が広がりつつある面もある。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度予定していたレポーター遺伝子の発現系をレンチウイルスの発現系へ変更する必要が生じたので、計画に若干の遅れが生じた。この計画遅れの分を24年度に繰り越して行う。今後はマウス乳腺上皮細胞の上皮形態形成過程における浸潤性(間葉系)分化転換細胞のGFP標識化によって細胞分取を行いと、網羅的比較解析による分化転換制御因子群の同定を試みる。また、実験過程で得られた多倍体染色体を有する細胞の多くが間葉・幹細胞で発現される遺伝子を発現しているという観察から、4倍体細胞の形成に対する乳腺組織の細胞系譜(乳腺幹細胞、筋上皮細胞、管腔上皮細胞)の影響を解析している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に計画の遂行に必要な実験試薬と消耗品、研究成果の発表のための論文投稿費に使用する。
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