2012 Fiscal Year Annual Research Report
抗MHC―II抗体を用いたドナー樹状細胞の移植前除去による新規免疫抑制法の開発
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23790235
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
上田 祐司 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (10364556)
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Keywords | 免疫組織学 / 樹状細胞 / cell trafficking / 移植免疫 / 免疫抑制 / 抗体 / MHC class II (MHC-II) / ラット |
Research Abstract |
最終年度は臨床肝移植に適応させるべく、まず(1)ドナー特異的な抗MHC-II抗体を用いて、移植前レシピエント腹腔投与法の最適化を検討した。免疫組織化学解析の結果、投与抗体量3mgではドナー肝DC遊走およびレシピエントT細胞活性化の抑制が見られたが、拒絶遅延効果はなかった。これは肝内マクロファージであるクッパー細胞が一部MHC-II弱陽性であり、余剰な投与抗体によって過度に活性化して炎症反応を引き起こしたためと考えられた。そこで投与抗体を減量しながら至適抗体量を検討したところ、最終的に0.3mg投与で、他の免疫抑制剤を使うことなく、移植肝の拒絶遅延効果を約3倍にすることができた(今夏投稿予定)。 次に (2)摘出肝の保存液内で本抗体を反応させる系について検討したところ、同一抗体量を反応させても(1)よりも拒絶遅延効果は短かった。両者の免疫応答性を比較したところ、(2)では傍胸腺リンパ節PTNにおけるドナーDC遊走とレシピエントT細胞活性化が残っていた。そこで肝DCには遊走性が異なる亜群が存在すると考え、解析したところ、ラット肝には少なくとも2つの免疫刺激性DCが存在し、これらは移植後、解剖学的に異なる経路(血行性とリンパ行性)で遊走することを見いだした。このうち後者はドナー肝から腹腔経由でPTNに遊走し、激しいT細胞応答を誘導した(Hepatology 56,1532,2012)。よって(2)の課題として腹腔経由のリンパ行性DC遊走をいかに抑えるかが考えられ、現在(2)の後、腹腔内に抗体を少量投与する方法を検討中である。 昨年見いだした(3)全てのドナーMHC-IIに反応する抗体を用いたdepletion効果の検討は再循環リンパ球を用いた系で既に検証・確認済みである。今後(2)を改善した後、抗体を(3)に切り替えて同様に行い、全ての肝移植に適応可能な新規免疫抑制法の完成を目指す。
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