2011 Fiscal Year Research-status Report
低酸素負荷に対するヒアルロン酸4糖の細胞保護効果の検討
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23790239
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
砂堀 毅彦 順天堂大学, 医学部, 助教 (00407115)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 低酸素 / 脳虚血 / 神経細胞死 / ヒアルロン酸4糖 / Toll様受容体 / 炎症性サイトカイン / 海馬 |
Research Abstract |
ヒアルロン酸(HA)は細胞外マトリックスの主要な構成要素で多岐に渡る機能をもつが、その多くはHAのポリマーの分子量に依存する。我々は新生仔マウスの低酸素/脳虚血負荷モデルにおける低分子量のヒアルロン酸4糖(HA4)と高分子量のHA(800kDa; HA-L)の神経細胞保護効果を検討した。HAは生後6日齢のマウスに術前12時間前と手術直前の2回腹腔より投与した。術後24時間後にTUNEL染色を指標として海馬錐体細胞層の細胞死を検討したところHA4投与群ではHA-L投与群、生理食塩水を投与した対照群と比較して死細胞数が有意に減少していることが確認された。また、HA4の効果が一時的に細胞死を遅延させた可能性を検討するため、術後7日の海馬の萎縮を定量化したが、こちらにおいてもHA4投与群では対照群と比較して萎縮が著明に減少していた。HA4投与による神経細胞保護効果の分子機序を明らかにするために早期炎症性のサイトカインであるIL1-の発現を確認したところ、対照群で術後上昇するIL1-の発現がHA4投与群では有意に抑制されていた。また、IL1-の転写に重要な役割をもつNF-B複合体の活性化も対照群と比較してHA4投与群では抑制されていた。最後にNF-B複合体の上流であるToll様受容体2または4の遺伝子欠損マウスに対して低酸素/脳虚血負荷を与えたところHA4投与と同様の神経細胞保護効果を示した。以上の結果とToll様受容体がHAの受容体の一つであることをあわせると、HA4がToll様受容体に対して拮抗的に働くことで低酸素/脳虚血負荷における神経細胞の保護効果示すことが強く示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は、低酸素脳虚血負荷モデルにおいてヒアルロン酸4糖を投与すると、海馬錐体細胞層において神経細胞保護効果を示すことを見出していた。本年度は、ヒアルロン酸の神経細胞保護効果はその分子量に依存することを見出した。また、分子基盤としてヒアルロン酸4糖がToll様受容体に対して拮抗的に働くことで炎症性サイトカインの発現を抑制しているというデータを得た。以上、得られて新たな知見は第34回日本神経科学大会、第42回北米神経科学学会において報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、試験管内においてHA4がToll様受容体に対して拮抗的に働くのか、アゴニストとの共投与実験において確認する。また、成獣マウスの中大脳動脈閉塞モデルにおける神経細胞保護効果も検討する。さらに、HA4投与により低酸素/脳虚血負荷時に誘導されるオートファジーが抑制されているのか、電子顕微鏡観察により確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品費は、基礎細胞培養培地、細胞培養用dish、免疫学的染色用の抗体、スライドグラス、その他の実験用プラスチック製品等の購入予定である。また、走査型電子顕微鏡を用いた観察を行うため、オスミウムや樹脂といった試薬に加え、ダイヤモンドナイフの再研磨(20万円相当)の費用も併せて算出した。また、旅費に関しては国内外の学会において研究成果を報告するために計上した。
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Research Products
(5 results)