2012 Fiscal Year Annual Research Report
低酸素負荷に対するヒアルロン酸4糖の細胞保護効果の検討
Project/Area Number |
23790239
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
砂堀 毅彦 順天堂大学, 医学部, 助教 (00407115)
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Keywords | 低酸素 / 脳虚血 / 神経細胞死 / ヒアルロン酸4糖 / Toll様受容体 / 炎症性サイトカイン / 海馬 |
Research Abstract |
ヒアルロン酸(HA)は細胞外マトリックスの主要な構成要素で多岐に渡る機能をもつが、その多くはHAのポリマーの分子量に依存する。我々は新生仔マウスの低酸素/脳虚血負荷モデルにおける低分子量のヒアルロン酸4糖(HA4)と高分子量のHA(800kDa; HMW-HA)の神経細胞保護効果を検討した。HAは生後6日齢のマウスに術前12時間前と手術直前の2回腹腔より投与した。術後24時間後にTUNEL染色を指標として海馬錐体細胞層の細胞死を検討したところHA4投与群ではHMW-HA投与群、生理食塩水を投与した対照群と比較して死細胞数が有意に減少していることが確認された。HA4投与による神経細胞保護効果の分子機序を明らかにするために早期炎症性のサイトカインであるIL1- betaの発現を確認したところ、対照群で術後上昇するIL1- betaの発現がHA4投与群では有意に抑制されていた。また、IL1-betaの転写に重要な役割をもつNF-kappa B複合体の活性化も対照群と比較してHA4投与群では抑制されていた。最後にNF-kappa B複合体の上流であるToll様受容体2または4の遺伝子欠損マウスに対して低酸素/脳虚血負荷を与えたところHA4投与と同様の神経細胞保護効果を示した。以上の結果とToll様受容体がHAの受容体の一つであることをあわせると、HA4がToll様受容体に対して拮抗的に働くことで低酸素/脳虚血負荷における神経細胞の保護効果示すことが強く示唆された。HA4は生体内にも存在する物質であり細胞、個体に対する毒性が認められないため、副作用を引き起こす可能性が極めて低く、予防的投与も可能である。よって、虚血性傷害に対する有用な薬剤として期待される。
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