2011 Fiscal Year Research-status Report
強力な細胞毒性を示す新奇ペプチドチャネルにおける未知のイオン透過・制御機構
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23790245
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
岩本 真幸 福井大学, 医学部, 助教 (40452122)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ペプチド / イオンチャネル / 細胞毒性 / 生理活性 |
Research Abstract |
強力な細胞毒性を示す海綿由来のチャネル形成ペプチド・ポリセオナミドB(pTB)の作用機序解明に向け、本年度は人工脂質平面膜を用いてpTBチャネルのイオン透過特性の詳細な解析を行った。pTBはβへリックスという特異な分子構造を持つが、pTB以外唯一のβへリックス型チャネルには抗生物質として知られているグラミシジンがある。グラミシジンA(gA)チャネルのイオン透過機構に関しては、これまでに知識が多く蓄積している。したがって、pTB、gA両チャネルのイオン透過機構を比較することで、pTBチャネル特有のイオン透過特性を明らかにしようと試みた。まず、pTBチャネル内に複数のイオンが同時に入り得るか検討した。イオン透過時のチャネル内イオン数は、透過機構の考察に必須の基本的情報であり、実験的に単一チャネルのイオン透過速度のイオン濃度依存性、および様々なモル比で2種イオンを混合した各溶液条件でのイオン選択性の変化を解析することで推定した。その結果、pTBチャネル内に同時に複数のイオンは入らないことがわかった。長さ3.5 nmのpTBチャネルよりも1 nmも短いgAチャネルには同時に2つのイオンが入り得るので、両チャネル内イオン透過の背景に存在するメカニズムは異なることが明らかになった。また、pTBチャネルの電位依存的なゲート開閉特性についても詳細に検討した。pTBの単一チャネル電流を解析し、開状態の寿命に電位依存性があることを明らかにした。さらに、開閉遷移速度がgAと比較して著しく速かったことから、pTBチャネルのゲート開閉には、gAチャネルのようなペプチドの会合・解離ではなく、ペプチド内の構造変化が関与していることが推定される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ほぼ当初の計画通り研究を進めることができた。具体的には、ポリセオナミドBチャネルのイオン透過特性の詳細を明らかにすることができ、また、その電位依存的なチャネル開閉機構についても新たな知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに明らかにしたポリセオナミドB(pTB)チャネルのイオン透過特性を基に、その背景に存在する透過モデルを推定することで、研究結果を一般化したい。また、pTBチャネルの細胞膜上での挙動特性について人工脂質二重膜系(リポソーム、脂質平面膜)を用いて解析を進め、どのような機序で細胞毒性発現に至るのか明らかにしていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
pTBチャネルの脂質二重膜上での挙動解析のために様々な合成リン脂質、蛍光試薬などの消耗品を購入する。また、研究成果を学会で発表するための旅費、および、論文投稿料などを支出する予定である。
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Research Products
(10 results)