2011 Fiscal Year Research-status Report
腸上皮における細胞膜結合型セリンプロテアーゼインヒビターの生理的意義に関する研究
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23790250
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
川口 真紀子 宮崎大学, 医学部, 助教 (90405598)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 上皮機能 / プロテアーゼ / 病理学 |
Research Abstract |
Hepatocyte growth factor activator inhibitor type 1 (HAI-1)ノックアウト(KO)マウスは胎盤機能不全の結果胎生致死となることから、HAI-1が高発現する腸管上皮で特異的にHAI-1が欠失する腸管特異的HAI-1コンディショナルKOマウスを作製し機能解析を行った。まず、腸管上皮におけるHAI-1の標的酵素を同定するために、HAI-1 KOマウス及びコントロールであるfloxed HAI-1マウスの腸管を各部位(空腸、回腸、結腸、直腸、盲腸)に分け、それぞれの部位について、現在同定されている各細胞膜結合型セリンプロテアーゼの発現を確認した。発現パターン及び発現レベルにHAI-1欠失による変化はみられなかった。組織学的解析の結果、HAI-1 KOマウスでは近位結腸及び盲腸の形態異常がみられ、アポトーシスが亢進していることが明らかとなった。さらに透過電子顕微鏡を用いて詳細に解析した結果、KOマウスの大腸では、いくつかの杯細胞の小胞体が拡張しており、小胞体ストレス誘導性のアポトーシスが亢進していることが示唆された。次に、炎症、再生におけるHAI-1の機能を解析するために、デキストラン硫酸誘発大腸炎モデルを作製したところ、HAI-1 KOマウスでは粘膜の浮腫、盲腸の萎縮、粘膜上皮の欠損などの炎症症状が、コントロールマウスと比べ、より重篤であった。さらに、炎症に対する腸粘膜上皮の再生が遅延し、早期に死に至る傾向がみられた。HAI-1 KOマウスでは、腸上皮の透過性亢進、タイトジャンクションの一部破綻がみられ、これらが、炎症に対する感受性亢進の原因ではないかと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腸管特異的HAI-1コンディショナルKOマウスを用いた解析結果から、HAI-1が、腸管上皮の形態形成維持や、粘膜上皮の修復・再生に必須であることを明らかにした。これらの表現型はHAI-1の標的酵素であるmatriptaseの腸管特異的HAI-1コンディショナルKOマウスと類似しており、HAI-1 KOマウスにおいて、matriptaseの局在異常がみられたことから、HAI-1がmatriptaseを制御することにより、腸管上皮の恒常性維持に重要な役割を果たしているということを明らかにすることができた。HAI-1欠失により発現変動する分子の探索については、cDNAマイクロアレイについてはすでに実施しており、いくつかの興味深い分子を見出すことができ、定量的RT-PCR法による発現の確認も終了している。これらの結果はすでに国際誌に論文として発表しており、計画通り達成することが出来たと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
HAI-1 KOマウスの表現型に関与する分子を探索するため、コントロールマウスとHAI-1 KOマウスの小腸、大腸の粘膜上皮から抽出したRNAと蛋白質を用いてそれぞれcDNAマイクロアレイ及び蛍光ディファレンシャル法によるプロテオーム解析を行った。プロテオーム解析については、質量分析によって同定できたタンパク質が非常に少なかったため、今後、タンパク抽出条件など解析のプロトコールを検討し、HAI-1欠失によって発現が変動するタンパク質の同定をさらにすすめていく。さらに、これらの網羅的解析によって得られた結果をもとに、HAI-1の新たな標的分子、機能を探索していく。また、HAI-1が腸上皮の分化の過程に関与しているかについては、まだ解析できていないので、今後、組織学的および分子レベルでの解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
プロテオーム解析のための機器使用のための費用、タンパク質発現解析のための抗体などの消耗品に大部分を使用する。また、研究成果を国内あるいは国際学会で発表するための旅費として使用する。
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Research Products
(6 results)