2011 Fiscal Year Research-status Report
カルシウムオシレーション非依存的破骨細胞分化を担う分子群の探索と同定
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23790265
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
黒田 有希子 慶應義塾大学, 医学部, 特任助教 (70455343)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | シグナル伝達 / 分化 / 破骨細胞 |
Research Abstract |
本研究ではカルシウムオシレーション非依存的な破骨細胞分化シグナルの中心として働く分子を探索・同定することを目標としているため、カルシウムオシレーション依存的分化メカニズムが阻害されているイノシトール3リン酸受容体ノックアウトマウス(IP3RKOマウス)由来の骨髄細胞を用いたスクリーニングを行なった。骨芽細胞培養株であるST2細胞の膜画分とIP3RKO細胞を用いた実験結果から、骨芽細胞の膜画分にカルシウムオシレーション非依存的な破骨細胞分化を誘導する分子が存在することが明らかとなった。現在、それらの分子を同定するため、膜画分タンパク質の抽出方法等の条件を検討している。また、骨芽細胞からのシグナルを受け、破骨細胞内でカルシウムオシレーション非依存的な破骨細胞分化メカニズムに関与する分子の探索も行なった。本年度は、MAPKKKファミリーメンバーであるCot kinaseに注目し、その破骨細胞分化における役割を調べた。Cot kinaseは血球系細胞株を用いた過剰発現系の実験においてNFATc2をカルシウム非依存的に活性化することが報告されているが、その生理的な意義、活性化の分子メカニズムについては不明であった。Cot kinase KOマウスを解析した結果、Cot kinaseが生体内におけるカルシウムオシレーション非依存的破骨細胞分化に関与していることが明らかとなった(未発表データ)。また、Cot kinaseがNFATc1を直接リン酸化すること、そのリン酸化によってタンパク質の安定性が増すことが明らかとなった(未発表データ)。これらの結果はCot kinaseがカルシウム非依存的にNFATc1を活性化する分子機構の一端を明らかにしたものであり、新たなNFATc1活性制御機構を発見した、という点で非常に興味深い知見といえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
骨芽細胞の膜画分タンパク質の調整に時間がかかり、骨芽細胞に発現している分子探索に関しては研究計画よりもやや遅れ気味である。しかしながら、膜タンパク質の調整に時間がかかることは実験計画の段階で予想されていたことであり、破骨細胞内の分子探索も同時に進めている。こちらの方は、着実に結果が出ていることから、研究全体としては概ね順調に進んでいると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
概ね当初の実験計画に従って研究を進めていく。しかしながら、骨芽細胞の膜タンパク質の調整に関しては遅れをとっているため、タンパク質の抽出、精製方法に関して見直す必要があると考えている。本研究では分子のスクリーニングが最も重要な課題であるため、この点に重点をおいて進めていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
未使用額の発生は効率的な物品調達を行なった結果である。これらの未使用額は翌年度の研究費と合わせ、主に消耗品(試薬や実験器具など)に使用することを計画している。
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