2012 Fiscal Year Annual Research Report
視床下部Sirt1によるエネルギーバランス制御の分子機構の解明
Project/Area Number |
23790270
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
佐々木 努 群馬大学, 生体調節研究所, 准教授 (50466687)
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Keywords | Sirt1 / 視床下部 / 摂食調節 / エネルギー消費 / 褐色脂肪 / 交感神経 |
Research Abstract |
加齢や摂取エネルギーの過剰は肥満を惹起するが、摂取カロリー制限は健康長寿をもたらし、この効果にNAD+依存性タンパク脱アセチル化酵素であるSirt1は重要である。視床下部弓状核にあるPOMCニューロン及びAgRPニューロンは全身のエネルギーバランスを制御する。他方、弓状核のSirt1は加齢とともに減少する。そこで、我々はPOMCニューロンおよびAgRPニューロンでのSirt1過剰発現を行い、加齢に伴う体重増加への影響を検討した。 POMCニューロンでの野生型Sirt1の過剰発現は、摂食量の変化を伴わず基礎代謝亢進により加齢に伴う体重増加を抑制した。基礎代謝の亢進は脂肪組織への交感神経活性の上昇を伴い、褐色脂肪細胞のミトコンドリア関連遺伝子の発現亢進、寒冷刺激時の体温維持および白色皮下脂肪の褐色化の亢進、および脂質分解の亢進が認められた。それに対しAgRPニューロンでの野生型Sirt1の過剰発現は、基礎代謝の変化を伴わず摂食量の抑制により加齢に伴う体重増加を抑制した。これらの表現型はオスでのみ認められた。レプチンシグナルの表現型はオスで強く出るが、これらのマウスでは若齢時からレプチン感受性の亢進を認めた。しかし、高脂肪高ショ糖食負荷による食事性肥満に対しては抵抗性を示さず、Sirt1過剰発現による体重増加抑制効果は完全に消失した。食事性肥満では視床下部弓状核でのSirt1過剰発現の減弱および視床下部NAD+含量の減少が認められ、Sirt1の機能が阻害されたことが表現型の消失を引き起こしたと考えられた。 POMCニューロンのSirt1は交感神経系を介してエネルギー消費を刺激し、AgRPニューロンのSirt1は摂食を抑制し、エネルギーバランスを負に制御する。これらの効果にはレプチン感受性の亢進を伴う。食事性肥満は視床下部Sirt1機能を阻害し、エネルギーバランス制御機構を破綻させる。
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