2012 Fiscal Year Research-status Report
G蛋白共役型受容体を介したエストロゲンシグナルによる免疫反応終息機構の解明
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23790273
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
岡本 まり子 麻布大学, 獣医学部, 講師 (30415111)
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Keywords | GPER |
Research Abstract |
体内に病原微生物が侵入するとまず自然免疫系細胞が活性化され、貪食作用などにより病原体の分解を行うと同時にサイトカインを産生してリンパ球を活性化し病原体の排除を遂行する。病原体の排除が完了すると免疫反応を終息させる必要があり、免疫反応終息機 構に関与する生体内因子の存在が知られている。女性ホルモンであるエストロゲンも抗炎症作用が知られているが詳細は明らかではない。研究実施者らは新たに細胞膜型エストロゲン受容体として同定したG蛋白共役型受容体GPR30/GPERが炎症性サイトカインの産生を制御することを子宮頸癌細胞株を使用した実験系で明らかにした。さらにマクロファージ細胞株においてもGPR30が発現していることを確認した。マクロファージ細胞株では核内移行型エストロゲン受容体も発現しているため、GPR30特異的アゴニストを使用してマクロファージ細胞株からの炎症性サイトカイン産生におけるGPR30シグナルの関与について検討を行った。GPR30はLPS刺激によるマクロファージからのサイトカイン産生を抑制した。プロモーターアッセイにより、GPR30は転写因子NF-kappaBによるプロモーター活性化を抑えることがわかった。さらにGPR30はIkappaBalphaの分解を阻害することによりNF-kappaBの核への移行を抑制していた。LPS刺激はTLR4を介してシグナルを細胞内へ伝達し最終的にNF-kappaBを活性化しIL-6をはじめとするサイトカイン産生を誘導するが、GPR30はこの経路を制御することでサイトカイン産生を抑制することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GPR30が免疫終息機構に関与しているかどうかについて主に自然免疫活性化後の制御に着目して解析を進めている。そして現在までに自然免疫で主要な担当細胞であるマクロファージからのサイトカイン産生をGPR30が制御することを見出した。マクロファージ細胞株を使用することでプライマリーマクロファージにくらべ効率的なサイトカイン産生測定系を樹立することができた。そしてGPR30がサイトカイン産生のプロモーター活性を抑制していること、特にTLR4を介したシグナル経路をGPR30は制御することでサイトカイン産生を抑制することが明らかとなった。平成23年度から24年度にかけて「直接的な制御」について解析することを計画しており、その点では当初の目的をおおむね達成している。
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Strategy for Future Research Activity |
GPR30による炎症性サイトカイン産生の直接的制御機構の解明をさらに行っていく。さらにGPR30による炎症性サイトカイン産生の間接的制御機構の解明を行う。具体的には制御性T細胞からのIL-10が他の細胞に作用することで免疫終息を誘導することが知られているため、制御性T細胞におけるGPR30の役割を調べる。また免疫担当細胞の一つであるNK細胞の活性化・細胞傷害機能もエストロゲンが影響を及ぼすことがいわれているため、NK細胞におけるGPR30の関与についても調べていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は遺伝子工学、分子生物学、免疫学の手法を駆使して実験を遂行するため、それらに関する実験試薬・消耗品は必要不可欠である。DNA・RNA実験試薬(約300千円)、タンパク質解析試薬(約200千円)、細胞実験試薬(約200千円)、および実験に使用するプラスチック器具類(約300千円)の購入を計画している。
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