2011 Fiscal Year Research-status Report
性ホルモンモニタリングを基礎とした現実のPOPs汚染レベルにおける環境医学的研究
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23790278
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
中尾 晃幸 摂南大学, 薬学部, 講師 (20288971)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 難分解性有機汚染物質 / 食品汚染 / 外因性内分泌攪乱化学物質 / 性ホルモン分析 / 生殖毒性 / 肝薬物代謝酵素誘導 |
Research Abstract |
食品中のPOPs汚染濃度を明らかにするため、トータルダイエットスタディーにより食品の分析を行った。大阪府および京都府のスーパーマーケットから調査に使用する食品を購入した。その内容は、高脂肪含有食品を中心としたものであり、肉類、魚介類、油脂類、乳類(チーズ、牛乳)、野菜類、いも類である。今回、調査した食品群の中で、高濃度に検出されたのは肉類と魚介類であり、肉類の中で最も高濃度であったのがクジラ肉(Total POPs濃度として9600 pg/g湿重量)であった。次に、高濃度であった牛肉は、1500~1800 pg/g湿重量と豚や鶏肉と比較すると約6~18倍高濃度であった。一方、野菜類やいも類の汚染濃度は18~170 pg/g湿重量と低濃度であった。これらの結果より、各食品群のPOPsによる汚染実態が部分的に解明された。今後、さらに調査対象食品群を広げ、食品汚染の全容を解明していく予定である。 次に、POPsの内分泌攪乱作用の影響評価を行った。C57BL/6マウスに各POPs(2,3,7,8-TCDD、マイレックス、リンデン、クロルデン、ヘプタクロール、ヘキサクロロベンゼン、ペンタクロロベンゼン、DDT、PFOS、クロルデコン、アルドリン、ディルドリン、エンドリン)を経口投与し、2日後の間薬物代謝酵素誘導能と精子数観察を行った。その結果、CYP1Aを基質とするEROD活性が2,3,7,8-TCDD投与群でコントロールマウスに比べて20倍上昇した。さらに、CYP2BのBROD活性ではマイレックスが2,3,7,8-TCDDよりも強く酵素誘導を引き起こすことが明らかとなった。一方、精子数観察ではHxCBzとクロルデコンを除くほとんどのPOPsで精子数減少が確認され、精子形成に影響を与えることが明らかとなった。今後、慢性的にPOPsを摂取させ次世代への影響評価を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究計画は、大きく2つのテーマに沿って行われた。1つは食品試料中のPOPs汚染濃度を測定し、摂取量を推定すること。2つは、動物実験におけるPOPsの影響を肝臓の薬物代謝酵素誘導能および精子形成能を精子数計数により確認した。1つ目のテーマである食品中のPOPs分析は、トータルダイエットスタディーにより高脂肪含有食品(肉類、魚介類、油脂類、乳類(チーズ、牛乳)、野菜類、いも類)を中心として行われた。その汚染レベルは魚介類や肉類において高濃度になる傾向を示し、野菜類およびいも類では低濃度であった。以上の結果より、食事経由のPOPs摂取量を部分的に解明することが出来た。2つ目には、動物を用いたin vivo試験において、POPs曝露による影響評価を行った。TCDDによるCYP1Aの誘導は広く知られているものの、その他のPOPsによるCYP誘導については皆無である。その結果、CYP1Aの誘導はTCDDで強く見られたが、その他のPOPsでは若干の誘導が確認されただけであった。一方、CYP2Bの誘導がマイレックスの投与により極めて強力に誘導することが明らかとなるとともに、その他のPOPsについてもCYP2Bを誘導することが判明した。さらに、ヘキサクロロベンゼンとクロルデコンを除くPOPsの曝露において、雄マウスで精巣上体における精子数が減少していることを明らかにした。このように2つのテーマとも当初計画していた内容で遂行できたことより、おおむね順調に進呈していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、3つの項目;(1)「性ホルモン分泌の影響」、(2)「酵素活性試験(薬物代謝酵素、ステロイド代謝・合成酵素)」および(3)「 POPs標準物質の複合的な曝露による内分泌攪乱作用の影響評価」に焦点を絞り計画を遂行する。(1)の性ホルモンのモニタリングは、テストステロンなどのアンドロゲン(4種)とその代謝物(8種)、エストラジオールなどのエストロゲン(2種)とその代謝物(1種)およびその前駆物質であるプロゲステロンなどのプロゲスチン(3種)をモニター対象とする。性ホルモンの分析は、血清試料をC18カートリッジカラム及び酢酸エチルにより性ホルモンとその代謝物を抽出し、最終的にTMS誘導体化処理を行った後、HRGC-HRMSを用いて性ホルモンとその代謝物の同時一斉分析を行う。(2)の酵素活性試験では、酵素活性の変化をモニターし、内分泌への影響を確認する。また、前項の性ホルモンとの関連についても比較する。具体的にはCYP1A1、CYP1A2(EROD活性)、CYP2B(BROD活性)、ステロイド代謝型のCYP3A、ステロイド合成型のCYP17(17β-hydroxylase)及びCYP19(Aromatase)の活性試験を実施する。(3)のPOPs標準物質の複合的な曝露による内分泌攪乱作用の影響評価では、POPs標準品を複合的に曝露させたときの影響を調査する。POPsの組み合わせは、芳香族炭化水素レセプター(AhR)に活性のあるダイオキシン類とエストロゲンレセプター(ER)に活性のあるDDTあるいはアンドロゲンレセプター(AR)活性物質などを計画している。具体的には、AhR×ER、AhR×AR、AhR×抗ER、AhR×抗ARのように各レセプターへ活性作用を持つアゴニスト同士や抑制的に作用するアンタゴニストを組み合わせて影響評価を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、動物実験が中心となることから、マウス(300匹)に300千円、解剖で得られた血液中の性ホルモンや臓器中のPOPs測定用にGCキャピラリーカラム(1本10万)を3本、質量分析計のフィラメントやチャンバー部分の消耗品代に200千円、薬品代に300千円を計上し、合計1100千円とする。さらに、国際学会発表のための出張旅費を200千円を計上し、合計1300千円とし平成24年度の研究費使用計画とする。
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Research Products
(9 results)