2012 Fiscal Year Annual Research Report
適応的な情動性、社会性を育む各性に適した養育環境の検討
Project/Area Number |
23790279
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
高瀬 堅吉 東邦大学, 医学部, 助教 (80381474)
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Keywords | 統合失調症 / 性差 / 動物モデル / 疾患関連分子 |
Research Abstract |
申請者は養育環境が行動および脳機能に対して発達段階依存的に、また、性特異的に影響を与えることを一連の研究から明らかにした。また、包括的行動評価系を用いて、雌雄ラットに乳児期後期から幼児期初期に母子分離を施すと、成熟後、雄性ラットのみで不安が高まり、社会性が低下することを発見した。さらに、プロテオーム解析を用いて、この行動異常への関連が示唆される脳内分子を複数列挙することに成功した。本研究は、これら行動異常の背景にある脳内メカニズムの更なる解明を目指し、情動性、社会性の脳基盤を神経回路レベル、分子レベルで明らかにすることが目的であった。しかし、先行研究は、この時期の母子分離操作が思春期後に統合失調症の陽性症状を模した行動表現型を導くことを報告しており、今回、申請者が得た行動表現型異常は、統合失調症の陰性症状に該当することが明らかとなった。すでに雄性ラットの扁桃体の全画分で行動異常に関連する脳内分子候補22個の発現量が得られており、そのうちの大部分が神経細胞の可塑性に関わる分子であった。そこで、統合失調症に関わりがあり、かつ、神経細胞の可塑性に関わるタンパク質の発現が、統合失調症の責任部位と目される脳領域で変化していると考え、海馬体におけるカルシニューリンの発現量を調べたところ、母子分離操作を施された雄性ラットで減少していることが示された。ラットの乳児期後期から幼児期初期はストレス不応期の中期であり、この時期の母子分離操作は雄性特異的に統合失調症の陽性、陰性症状関連行動を引き起こすこと、さらにその分子機構 として、海馬におけるカルシニューリンの発現が関わることが明らかとなった。申請者は、これを論文としてまとめて発表した。最終年度は統合失調症モデルとして確立した当該ラットを対象に、生化学的、生理学的、形態学的解析を更に進め、候補分子間の相互作用について検討を行った。
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Research Products
(2 results)