2012 Fiscal Year Research-status Report
ポストコンディショニングによる虚血心筋細胞保護機構の解析
Project/Area Number |
23790286
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
西田 洋文 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80513043)
|
Keywords | 心筋保護 / ミトコンドリア / ATP感受性K+チャネル / JAK/STAT / SAFE / ポストコンディショニング |
Research Abstract |
虚血心筋保護においてミトコンドリア内膜に存在する二つのK+チャネルである、ATP感受性K+(mitoKATP)チャネルとCa2+活性化K+(mitoKCa)チャネルが重要とわれわれは報告してきた。 本研究では,プレコンディショニングでは重要といわれているmitoKATPチャネルと、Survivor Activeting Factor Enhancement (SAFE)とも呼ばれポストコンディショニングで重要といわれるJAK/STATとの関連性に着目して、前年度では細胞レベルであるフラボプロテイン自家蛍光法を用いて解析を行った。その結果、ウサギ心室筋細胞においてはmitoKATPチャネルの開口に対してJAKの活性化は開口増強調節作用を有していることが示唆され、mitoKCaチャネルとJAK/STATのリンクは認められなかった。それゆえ、今年度はSAFEであるSTAT3がコネキシン43(Cx43)の転写を促し、またCx43がmitoKATPチャネルを介した細胞保護にメディエーターとして働くことが報告されたことを踏まえて、Cx43がJAK/STATの活性化に伴うmitoKATPチャネル開口に関連しているか細胞レベルであるミトコンドリア内カルシウム濃度とフラボプロテイン自家蛍光反応の両方面より検討したが、これらに対するCx43の介在は確認できなかった。それゆえ次年度はex vivoである心筋梗塞モデルにおいてJAK/STATとmitoKATPチャネルとの関連に着目し、これらのキナーゼ系の活性化をウェスタンブロッティング法にて確認して、心筋保護機構解明の研究を進めていく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コネキシン43の存在が虚血再灌流障害に対する心筋保護機構において重要な役割を果たしているのではないかと仮説を立て検討してきたが、フラボプロテイン自家蛍光法やミトコンドリアカルシウム濃度測定により仮説が打ち消された。実際、仮説を立てる際に核となった参考文献も2012年の段階で撤回されてしまい、検討の方向性を転換することとなった。それゆえ非常に遅れてしまっている。次年度はミトコンドリアATP感受性K+チャネルとSAFE経路だけではなくRISK経路にも着目することで遅れた検討を取り戻していく方向である。
|
Strategy for Future Research Activity |
ミトコンドリアATP感受性K+チャネルとSAFE経路とが直接(コネキシン43の介在なく)リンクして心筋保護効果を発揮することをex vivoのLangendorff潅流心を用いた心筋梗塞モデルによって証明し、またSAFEだけでなくRISK経路の活性化もクロスリンクしていないかをウェスタンブロッティング法を用いて確認していく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は仮説を立てる際に核となった参考文献が撤回されてしまったこともあり、本来24年度に予定していた実験が出来なかったため、未使用の研究費が生じてしまった。次年度は検討の方向性を変換し、ミトコンドリアATP感受性K+チャネルとSAFE経路だけではなくRISK経路にも着目することで遅れた検討を取り戻していく。 平成25年度は前年度の結果を踏まえ、薬理学的ポストコンディショニングとSAFE経路及びRISK経路の活性化がミトコンドリアKATPチャネル開口にリンクしているかをウェスタンブロッティング法で確認し、そのうえでウサギ心筋梗塞モデルを用いて心筋梗塞減少効果とその際に活性化されているキナーゼ系であるSTAT/JAKとmitoKATPチャネルとの関連を検討する。 (1) 虚血・再灌流モデルによる実験 ポストコンディショニングによって心筋保護効果が生じるか否かを検討するため、ウサギのランゲンドルフ灌流心モデルを用いて30分全虚血120 分再灌流後の心筋梗塞サイズを測定する。その際に種々の薬剤(mitoKATP開口剤はもちろん、JAK/STAT3 系のみならずRISKとよばれポストコンディショニングに重要なもう一つのキーであるPI3K/Akt系を活性化する薬剤)を再灌流早期に投与し心筋梗塞減少効果を発揮するかを判定し、それらの効果がmitoKATP チャネル遮断薬(5-hydroxydacanoate)、JAK 阻害剤(AG490)、PI3K 抑制剤(LY294002)により消失するか否かを検討する。 (2) ウェスタンブロッティングを用いた細胞内シグナル伝達機構の解明 ポストコンディショニングの成立にPI3K/Akt あるいはJAK/STAT が関与しているか否かを明らかにするため、これらのキナーゼのリン酸化の程度上記(1)と同様の薬剤を用いて測定する。
|