2012 Fiscal Year Annual Research Report
Dysbindinによる神経伝達物質受容体輸送メカニズムの解析
Project/Area Number |
23790291
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
飯塚 幸彦 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (00365404)
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Keywords | 統合失調症 / 精神神経疾患 |
Research Abstract |
本研究では、有力な統合失調症発症脆弱性因子の一つであるDISC1に焦点を当て、その生理機能や分子間ネットワークを解明することにより、統合失調症の原因および病態の解明を目指すことを目的とした。これまでの研究により我々は、DISC1 の新たな結合分子として液胞型プロトンATPase (V-ATPase)複合体を同定しており、これらがDISC1 の新規の生理機能に関わる可能性を見出した。この知見をもとに、生化学的、細胞生物学的手法により解析を進め、また近年我々が作製したDISC1ノックアウトマウスを用いることで、in vivo の脳内での液胞型プロトンATPase に関連する分子動態の解明を行い、統合失調症の分子病態解明に努めた。神経細胞内においてDISC1/V-ATPase の相互作用が存在し、DISC1 がV-ATPase の機能を制御していると仮定すると、シナプス小胞ならびに有芯小胞への影響が考えられる。In vitroでの解析において、DISC1と直接結合をするV-ATPaseサブユニット同定を行ったところ、小胞膜表面上でV0セクターとV1セクターを結びつける軸として働く、ATP6V1Dが強く結合することが示された。当研究室で作製したDISC1ノックアウトマウスを用いて、V-ATPase複合体のそれぞれのサブユニットの神経細胞内での局在をイムノブロット法を用いて検討したところ、野生型マウスと比較し、膜画分であるP2画分では違いが認められなかったが、粗シナプス小胞画分において、野生型と比較しDISC1ノックアウトマウスでは、ATP6V1Dの局在が減少していることが示された。このことは、DISC1 欠損によるV-ATPase を介した神経伝達物質放出機構への影響を示唆し、新たな統合失調症の分子病態を説明する機序である可能性が示された。
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