2011 Fiscal Year Research-status Report
フラボノイドの細胞保護作用を決定する細胞膜の機能的・構造的変化の解析
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23790292
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松島 充代子 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (10509665)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | フラボノイド / 細胞膜 / heme oxygenase-1 |
Research Abstract |
フラボノイドは天然に存在する機能性成分で抗アレルギー作用、抗炎症作用、抗酸化作用など様々な作用を有しているが、分子レベルでの詳細な作用機序については明らかにされていない。申請者はフラボノイドの多彩な細胞保護作用は細胞に共通した分子機構の阻害により発揮されると考え、細胞が外界と接する細胞膜に注目した。特にシグナル伝達物質を集積し細胞の活性化を促す場所である脂質ラフトにフラボノイドが何らかの変化を起こすのではないかと考え、フラボノイドによる細胞膜の機能的・構造的変化を解析し、フラボノイドの作用機序を解明することを目的とした。 肥満細胞の脱顆粒時に起こる細胞膜の変化を(1)脂質ラフト構成成分の変化、(2)シグナル伝達分子の脂質ラフトへの集積、(3)カルシウム流入を促進する小胞体介在分子と細胞膜に局在する分子の融合の3つに分け、それぞれに対するケルセチンの影響およびheme oxygenase (HO)-1との関与を評価した。 (1)ついては、ケルセチンがカベオラの構成蛋白であるcaveolin-1 mRNAの発現を有意に抑制することが明らかとなった。(2)については、抗原刺激による肥満細胞の活性化の最初のシグナルとしてLyn、細胞膜成分を使用して活性化するphospholipase D (PLD)の2種類について検討し、ケルセチンはLynの脂質ラフトへの集積を抑制すること、PLDが脱顆粒およびケルセチンによるHO-1の発現誘導に関与していることが明らかとなった。また、PLDを介したケルセチンのHO-1の発現誘導にはPI3KおよびAktが関与していることも明らかとなった。(3)について、脱顆粒の誘導に必要な細胞内へのカルシウム流入に関与するstromal interaction molecule (STIM) 1の活性化について検討し、ケルセチンはSTIM1細胞膜への移行を抑制することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度はケルセチンの抗アレルギー作用とcaveolinの関与について肥満細胞株を中心にin vitroの系で検討し、また併せてケルセチンのHO-1誘導機序との関与についても検討することが当初の研究計画であった。実際にはケルセチンの細胞膜への影響について、ケルセチンの抗アレルギー作用に焦点を当て検討し、肥満細胞の脱顆粒時に起こる細胞膜の変化を(1)脂質ラフト構成成分の変化、(2)シグナル伝達分子の脂質ラフトへの集積、(3)カルシウム流入を促進する小胞体介在分子と細胞膜に局在する分子の融合の3つに分け、それぞれに対するケルセチンの影響およびHO-1との関与を評価し、その結果、ケルセチンはcaveolin-1の発現、Lynの脂質ラフトへの集積、PLDの活性化、STIM1の細胞膜への移行を抑制することで抗アレルギー作用を発揮することが明らかとなった。さらに、ケルセチンによるHO-1の発現誘導にはPLDが関与しており、PLDの活性化にはPI3KおよびAktが関与していることも明らかとなった。 平成23年度はケルセチンの抗アレルギー作用の細胞膜で起こる作用機序としてcaveolin-1のみならず、PLDやSTIM1などの分子の関与も明らかになった。さらにHO-1を誘導するシグナル伝達分子について、これまでは転写因子nuclear factor erythroid-2-related factor 2 (Nrf2)の関与しか分かっていなかったが、新たにPLD、PI3K、Aktも関与していることが明らかとなり、当初の計画を十分に達成できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度は肥満細胞を中心に検討したが、平成24年度は平成23年度で得られた結果についてより詳細に検討するとともに、フラボノイドの持つ抗アレルギー作用以外の細胞保護作用について活性酸素による細胞傷害に対するフラボノイドの保護作用にcaveolin-1、PLDが関与しているかを肺胞上皮細胞ならびに線維芽細胞を用いてin vitroおよびin vivoの系で確認する。 ケルセチンの抗アレルギー作用については、ケルセチンがcaveolin-1、Lyn、PLDなどの細胞膜構成成分あるいは細胞膜介在分子に作用することは明らかとなったが、これらの分子がケルセチンによるHO-1を介した抗アレルギー作用と共通したシグナルの下で起こるのか、あるいは独立して起こるのかを検討する。具体的にはHO-1のsiRNAを導入したHO-1のノックダウン細胞株を作製し、HO-1の発現や活性がない状況でのケルセチンによるcaveolin-1、Lyn、PLDの発現抑制、ラフトへの集積抑制、抗アレルギー作用の有無を検討する。さらに、抗アレルギー作用を持つフラボノイドとしてはミリセチンやケンフェロールなどがあり、本研究で明らかになる機序およびシグナル経路を他のこのようなフラボノイドで確認する。 フラボノイドの持つ抗アレルギー作用以外の細胞保護作用については、予備実験で確認しているケルセチンの活性酸素による肺胞上皮の傷害抑制やサイトカイン誘導性の膠原線維増生抑制についてcaveolin-1、PLDの関与を検討し、ケルセチンによる抗アレルギー作用以外の細胞保護作用が抗アレルギー作用と共通してcaveolin-1、PLDを介していることを検討し明らかにする。最終的には急性肺損傷/急性呼吸促迫症候群(ALI/ARDS)モデルを作製し、フラボノイドの抑制効果についてin vivoでも証明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
細胞培養を中心に実験を行い、アレルギー反応は肥満細胞を活性化させた時の顆粒やサイトカイン量で評価を行う。フラボノイドの抗アレルギー作用以外の細胞保護作用について検討するために、肺胞上皮を活性酸素で傷害させる系および線維芽細胞を用いてサイトカイン誘導性の膠原線維増生の系を用いてフラボノイドの影響を検討する。細胞培養、肥満細胞活性化試薬、膠原線維を増生するサイトカイン、ELISA試薬に研究費の3分の1を予定している。また、フラボノイドによって発現調節を受ける遺伝子の解析や各種シグナル伝達分子の動向を検討するために研究費の3分の1を予定している。得られた結果をもとに疾患モデルマウスを用いてフラボノイドの効果を検討するため実験動物の費用として研究費の3分の1を予定している。
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Research Products
(19 results)