2012 Fiscal Year Research-status Report
シグナルソームの形成および機能におけるプロテインキナーゼCの役割の解明
Project/Area Number |
23790293
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
梶本 武利 神戸大学, 大学院医学研究科, 助教 (00509953)
|
Keywords | プロテインキナーゼC / スフィンゴシン-1-リン酸 / スフィンゴシンキナーゼ / スフィンゴシン-1-リン酸受容体 |
Research Abstract |
本研究では、申請者のPKC活性化の時空間制御機構に関する過去の成果を発展させ、またPKC活性化の生細胞内での時空間動態解析を可能にするCKAR(C Kinase Activity Reporter)を有効に利用することで、新たなPKCシグナロソームを同定し、細胞内局在、動態の意義に重点を置き、シグナロソームの機能におけるPKCの役割の詳細を解明することを目的としている。 平成24年度は、スフィンゴシンキナーゼ-PKCシグナロソームの場の同定、およびスフィンゴシンキナーゼ-PKCシグナロソームの生理的意義の解明を行った。 蛍光タンパク質を融合したスフィンゴシンキナーゼ、S1P受容体、PKCをそれぞれ遺伝子導入によりHeLa細胞に発現させ、各種細胞内小器官のマーカーを用いてスフィンゴシンキナーゼ、S1P受容体、PKCの3者が共局在する場の存在を検討した。結果後期エンドソームにおいてスフィンゴシンキナーゼ、S1P受容体、PKCの共局在が観察された。またこれら3者の後期エンドソーム上での活性を検討したところ、いずれも定常状態において活性化状態にあることが確認された。さらにスフィンゴシンキナーゼ、S1P受容体、PKCの阻害剤やsiRNAを用いて後期エンドソームの成熟に対する影響を検討したところ、スフィンゴシンキナーゼ、S1P受容体、PKCいずれも後期エンドソームの成熟を抑制し、さらにスフィンゴシンキナーゼ、S1P受容体、PKCそれぞれのレスキュー実験によりこの抑制効果が有為に回復することが示された。以上の結果から、スフィンゴシンキナーゼ、S1P受容体、PKCは後期エンドソーム上で協同的に働き後期エンドソームの成熟において重要な役割を担っていることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、新たなPKCシグナロソームとして、細胞内局在、動態に重点を置いて研究を進め、後期エンドソーム上でのスフィンゴシンキナーゼ-S1P受容体-PKCシグナロソームの存在を示すことが出来た。また当初平成25年度にのみ計画していた「課題3」のスフィンゴシンキナーゼ-S1P受容体-PKCシグナロソームの生理的意義の解明について、一足先にその関連性を示すことが出来た。一方で「課題1」の中でスフィンゴシンキナーゼ-S1P受容体-PKCシグナロソームにおける相互作用に必要なスフィンゴシンキナーゼ、S1P受容体、PKCの分子内ドメインおよびアミノ酸の同定については、現在その完遂に向けて進行中であり、平成25年度に継続して行う予定である。現在までのところ研究機関全体を通しておおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、スフィンゴシンキナーゼ-PKCシグナロソームについてさらに詳細なメカニズムの解明を進め、スフィンゴシンキナーゼ-PKC相互作用の同定、スフィンゴシンキナーゼ-PKC相互作用に重要な分子内ドメインの同定、スフィンゴシンキナーゼ-PKCシグナロソームの後期エンドソーム成熟における重要性の解明、までを明らかにする。 具体的には、まずスフィンゴシンキナーゼ、S1P受容体とPKCについて生細胞内での相互作用を高感度FRETイメージングシステム下で解析することで後期エンドソーム上での相互作用を検討する。次にスフィンゴシンキナーゼ、S1P受容体、PKCのタンパク質間相互作用に重要だと予想されるドメインやアミノ酸を欠失させた変異体を作製し、培養細胞系に発現させ、FRET法を用いて相互作用タンパク質との結合に必要なスフィンゴシンキナーゼ、S1P受容体、PKCの分子内ドメインおよびアミノ酸の同定を行う。さらに同定したスフィンゴシンキナーゼ、S1P受容体、PKCのタンパク質間相互作用に重要なドメインやアミノ酸を欠失させた変異体を培養細胞系に発現させ、またスフィンゴシンキナーゼ、S1P受容体、PKCに選択的なsiRNAを組み合わせることで、スフィンゴシンキナーゼ-S1P受容体-PKCシグナロソームが形成出来ない状態を構築した上で、後期エンドソームの成熟を観察し、スフィンゴシンキナーゼ-S1P受容体-PKCシグナロソームの後期エンドソーム成熟における関与を検討する。またこの際、後期エンドソーム上でのPKCの活性化をCKARを用いて検討することで、後期エンドソーム上でのPKC活性化におけるスフィンゴシンキナーゼ-S1P受容体-PKCシグナロソームの機能的な意義を明らかにする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に引き続き、平成25年度の研究費は主に消耗品費として使用する。その内訳は、遺伝子の欠失変異体および点変異体の作製のためのプライマー、遺伝子導入試薬、スフィンゴシンキナーゼやPKCの阻害剤などを含む「一般試薬」として400,000円、細胞培養液や血清などを含む「タンパク性試薬」として200,000円、スフィンゴシンキナーゼ-S1P受容体-PKCの細胞内シグナロソームの相互作用実験に用いる抗体および色素を含む「抗体および色素類」として300,000円、遺伝子組み換え実験に用いるキット類やsiRNAの合成などを含む「キット類」として200,000円、ライブセルイメージングに用いる顕微鏡観察用ガラスボトム培養ディッシュなどを含む「ガラス器具およびプラスチック類」として150,000円である。またこれまでの成果を学会などで発表するために旅費として50,000円を、論文投稿費として200,000円を使用する。
|