2012 Fiscal Year Research-status Report
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23790296
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川崎 拓実 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任研究員(常勤) (60584414)
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Keywords | セリンスレオニンキナーゼ / ウィルス感染 / スクリーニング / TBK1 |
Research Abstract |
はじめに病原体が細胞に感染すると、細胞はインターフェロンをはじめとする炎症性サイトカインを産生し、細胞から放出されたサイトカインは引き続きT細胞など獲得性免疫による生体防御の誘導などに重要な役割を果たす。病原体の認識には、まず、病原体の特徴的な部位を細胞内のそれぞれのレセプターが認識し、その後、様々なシグナルたんぱく質をへて、シグナルが転写因子にまで伝わることでサイトカインの産生が開始される。各々の病原体由来のリガンドに対する細胞内のレセプターとレセプターからサイトカイン産生までに至るシグナリングの全容は明らかになりつつあるが、依然として不明な点も数多く残されている。TANK Binding kinase 1(TBK1)は、活性化し、転写因子Interferon Regulatory Factor(IRF)3 を直接リン酸化する。リン酸化されたIRF3は核内に移行し、インターフェロンをはじめとするサイトカインの発現を誘導する。TBK1によるIRFのリン酸化が、外来因子の応答に必須であることは、in vitro、 in vivoの研究により明らかになったものの、どのようにTBK1-IRF3シグナルの活性化が制御されているか?は依然不明であった。本研究では、TBK1-IRF3シグナル活性化メカニズムを明らかにするため、その活性化を制御する因子の探索と制御ドメインの構造を解明することを目的にしている。これまでの研究により、TBK1-IRF3シグナルを調節する因子として新規に内因性のイノシトールリン脂質の一種であるイノシトール5リン酸を同定した。また、このイノシトール5リン酸が病原体由来のリガンド依存的に増加し、リン脂質キナーゼであるPIKfyveにより産生制御されていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
23年度においてTBK1-IRF3シグナルを活性化させる因子の探索のため、in vitroでの活性化測定系を立ち上げ、その結果、細胞膜成分を含む分画に活性化する因子が存在することが明らかにした。それら脂質のうち、TBK1-IRF3の活性化に寄与する脂質は、イノシトールリン脂質の一種であるイノシトール5リン酸であることを明らかにした。さらに細胞内でのその脂質の役割を検討するため、イノシトール5リン酸の合成酵素を同定し、酵素の機能阻害がTBK1-IRF3シグナルを抑制することを明らかにした。また、どのようなメカニズムでTBK1-IRF3シグナルを制御しているか検討したところ、イノシトール5リン酸はTBK1の活性化を制御しているというより、IRF3と結合することにより、IRF3の構造変化をもたらすことで、シグナル伝達を制御しているとう知見が得られた。一方、TBK1の構造を解明する研究は、昆虫細胞による精製はうまくいくものの過剰発現による細胞毒性のためか発現量が向上しないため、たんぱく質の量が確保できていない。現在キナーゼ変異体を用いて精製を試みている。
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Strategy for Future Research Activity |
スクリーニングを経て同定した酵素は、現在コンディショナルノックアウトマウスの作製をしており、floxマウスの作製までが終了している。今後、in vivoレベルでの自然免疫における役割を明らかにするため、樹状細胞特異的creリコンビナーゼ発現マウス、マクロファージ特異的creリコンビナーゼ発現マウスなどと掛け合わせることで解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に合成脂質や、マウス作製のための消耗品を中心に使用する。今回得られた結果を学会で発表するための、旅費としても使用する。
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Research Products
(2 results)