2011 Fiscal Year Research-status Report
脳内代謝と中枢神経活動を結ぶ橋渡しとしてのATP・アデノシンの役割
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23790303
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
川村 将仁 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (10408388)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 薬理学 / 神経科学 |
Research Abstract |
ATPは神経細胞内ではエネルギー供給源である一方、細胞外では各種プリン受容体を介して神経細胞を修飾しうる。そのため、ATPおよび、その加水分解物アデノシンは脳内代謝変化を感受し、それを神経活動修飾に結びつける橋渡しの役割を担っている可能性が考えられる。脳内代謝変化と中枢神経疾患の間にあるcause-and-effectの関係は未解明であるが、一つの例外としてketogenic dietを代表とする抗てんかん食事療法が挙げられる。この食事療法は、食事により人為的に代謝を変化させることが中枢神経作用を発現するという点において、脳内代謝変化が神経修飾を引き起こすことを我々に示している。本研究計画では、ketogenic dietによる神経活動修飾がATPおよびアデノシンを介していることを証明することを目的とする。Control dietまたはketogenic diet施行ラットおよびマウスより急性海馬スライス標本を作成し、細胞外記録を用いて両者を比較・検討することによりbicuculline-induced burstingに対するketogenic dietの抗けいれん作用の機序解明を行った。ketogenic dietスライス標本では細胞外グルコース濃度低下によりbicuculline-induced burstingが有意に抑制された。この抑制作用はアデノシンA1受容体の拮抗薬にて消失し、アデノシンA1受容体ノックアウトマウスで観察されなかったことからアデノシンA1受容体の活性化を介していると考えられた。また、bicuculline-induced bursting の抑制作用はKATPチャネルの開口を介していることが薬理学的に示された。本年度の研究成果により、抗てんかん食事療法が脳内代謝変化を経て、アデノシン受容体を活性化することにより神経活動修飾を行う事実を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画では、平成23年度は研究計画1として細胞外記録を用いたbicuculline-induced burstingに対するketogenic dietの抗けいれん作用の機序解明を、平成24年度は研究計画1の継続および、研究計画2としてperforated patch-clamp methodを用いたketogenic dietによる脳内代謝変化がおよぼす細胞内ATP濃度変化の間接的測定を行う予定であった。平成23年度の研究では研究計画1の約三分の二に相当する成果を上げており、当初の研究計画通りに進捗していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は当初の研究計画通りに研究計画1を継続し、ketogenic dietスライス標本におけるbicuculline-induced burstingの抑制作用の機序解明を行う。特に、アデノシン受容体を活性化する細胞外アデノシンの供給源に着目し、ATPの細胞外放出の関連について薬理学的に検討を行う予定である。また、平成24年度は研究計画2としてperforated patch-clamp methodを用いたketogenic dietによる脳内代謝変化がおよぼす細胞内ATP濃度変化の間接的測定を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は実験計画を失敗なく効率よく施行できたため、bicuculline等の試薬購入予定費82,671円が未使用であったが、平成24年度は合成ペプチド等の高額試薬の使用を予定しており、繰り越した未使用額は平成24年度一般試薬消耗品費として使用する。平成24年度直接経費は平成23年度に引き続き研究計画1・2のための消耗品として実験動物費(100,000円)・高ケトン飼料費(50,000円)・一般試薬消耗品費(282,671円)・電気生理実験用消耗品費(50,000円)を使用予定である。また研究計画2におけるスライスパッチクランプを行うために必須なナリシゲの三次元液圧マイクロマニピュレーター・MHW-3(700,000円)を購入予定である。
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