2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23790308
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
藤田 隆司 立命館大学, 薬学部, 准教授 (30319793)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ストレスバイオマーカー / FoxOs / 転写因子 / マイクロアレイ |
Research Abstract |
本研究の目的は、骨のストレス状態を示すバイオマーカーを抽出し、得られたバイオマーカーに対する抗体を用いてリスク診断する方法の構築である。骨へのストレスは、骨粗鬆症やリウマチなどの代謝性疾患の病態に見られる骨量低下をもたらす悪質なものと、重力負荷による骨剛性獲得のように良質のものがある。骨へのストレス応答を担うFoxOsシグナルの活性化は、ストレス感知因子を誘導し、これにより骨量を増加させている可能性が高い。そこで、骨のストレスのバイオマーカー探索を目的に、GFP、FoxOsの恒常的活性化型FoxO3a-TM、およびdominant-negative (dn)FoxOsを発現するアデノウイルスを用いて、マイクロアレイに用いる試料作成を試みた。骨格形成系の培養細胞における転写因子の発現および活性は、個体を用いたシステムと大幅に異なることが、これまでのマイクロアレイ解析の蓄積により明らかにできていたので、特にRunxファミリーによる分子発現と骨形成におけるポジティブな役割が反映できるシステムである軟骨培養系、とりわけmicromass高密度培養系を採用し、試料作成を行った。 FoxO3a-TMで2倍以上の遺伝子(1433)と dnFoxOsで0.5倍以下の遺伝子(1597)を抽出し、両方に共通した遺伝子(1183)を抽出した。FoxOsの上流に位置し、不活性化を受けるAktの恒常的活性化体myrAktを発現するアデノウイルスとの対比は、初代培養軟骨細胞のシステムが異なる実験条件から得られたデータであるためか、今回の解析データと整合性のある遺伝子は92と少なかったことから、参照データとしてとどめることとした。 抽出した1183遺伝子のうち、シグナルペプチドをコードする遺伝子は、143とさらに抽出できた。骨芽細胞系でのマイクロアレイ解析を追加し、比較検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
抽出遺伝子の精度は、機能獲得(FoxO3a-TM)と機能抑制(dnFoxOs)の両面からのアプローチで、制御されている遺伝子が確実に抽出できたと考えている。既知のストレスマーカー遺伝子Gadd45a、ubiquitin ligase atrogin-1 (MAFbx)も含まれていた。一方意外なことはFoxOsがインスリンシグナルの下流で抑制される因子であることから、インスリンシグナルと共通の制御遺伝子が抽出されることが予測されたが、想定よりも遙かに少ない遺伝子が抽出された。すなわち、インスリンシグナルの下流としての位置づけ以外の機能、つまりそれがストレス応答遺伝子として特徴付けられてきたFoxOsの新しい機能解明の可能性が大いに膨らんでいる。 この抽出された遺伝子の優先順位を、シグナルペプチドを有する分泌性の遺伝子から再現性確認のため、100遺伝子はリアルタイムPCR(他予算により研究室に設置済み)装置を用いて、抽出遺伝子の絞り込み作業に入っている。平行して、骨のストレス以外のストレスバイオマーカーとなる可能性が推定できる遺伝子、例えばマクロファージにおける免疫応答に重要な遺伝子(免疫応答のバイオマーカー)、肌ストレスのバイオマーカーとして利用の可能性が探れる候補も抽出されてきていることから、研究デザインの時点では骨のストレスに対するバイオマーカー探索としていたものであるが、優先順位を「実用化」の視点からも戦略を修正しながら、研究の進捗はおおむね順調であると考えている。 骨のバイオマーカー探索を第一主眼に置く研究として、本プロジェクトは遂行していることを申し添える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の当初研究計画では、骨ストレスのバイオマーカー候補となるものに対する抗体を作成し、骨量減少モデルマウス、尾懸垂マウスより調製した血液試料を用いてELISAを行う予定であった。 抗体作成に至る候補遺伝子の絞り込み作業が完了してはいないが、候補遺伝子のクローニングは40遺伝子完了するなど、遺伝子の機能を調べることを優先的に研究展開している。つまり、転写因子FoxOsによる遺伝子発現制御について、標的遺伝子が機能未知なものが多く、バイオマーカーの実用化に先駆けて、遺伝子の機能を知る必要があることから、学術的な興味を優先させ、遺伝子機能解明を先行させている。 また、マイクロアレイの対比解析が高密度培養系の1つの条件からの抽出であることから、骨のストレス解析について普遍性を考慮したい。そこで、骨芽細胞の分化モデルを用いて、追加のマイクロアレイ解析を行う予定であったため、年度末に予算執行に残が発生した。これは現在、サンプル(試料)の調整中で、年度明けに外注予定で、年度末3月期にすでに学内調達を行い、執行を間近に控えている。 今後、遺伝子機能の早期解明を軸に、ストレスバイオマーカーの実用化を目指して解析を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
4月期に予定通りマイクロアレイ解析の外注を予定している。その後、これまでの解析ノウハウを活用し、迅速にストレスバイオマーカー遺伝子の候補を絞り込んでいく。 また予定通りすべて、消耗品費として、カスタム合成プライマー・遺伝子組換え関連試薬・細胞培養関連試薬および消耗品費用として拠出する予定である。
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Research Products
(3 results)