2011 Fiscal Year Research-status Report
膵β細胞におけるクロマチン構造タンパク質HMGN3の機能解明
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23790323
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
倉橋 敏裕 山形大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00596570)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 国際情報交流 (米国・NIH) / HMGN / クロマチン / 膵β細胞 |
Research Abstract |
近年、エピジェネティクス制御の破綻と疾患との関連が次々と明らかにされている。クロマチン構造タンパク質であるHMGNファミリータンパク質はクロマチンに結合することによりエピジェネティクス制御において重要な役割を担っていることが示されてきた。また一方で、HMGNファミリータンパク質は転写、DNA修復、DNA複製といった様々な核内反応の制御に関与していることが古くから示されてきているが、HMGNファミリータンパク質がどのような高次生命現象の制御に関与しているかは不明な点が多い。また、HMGNファミリータンパク質間での機能的な重複性などに関しても未解明である。そこで、独自に作成したHMGNファミリータンパク質全てに対する抗体および遺伝子欠損マウスを用いることにより、上記の解明に取り組む。特に本研究では組織特異的発現が認められるHMGN3に着目し、多くの組織に偏在するHMGN1との比較も含めて解析した。得られた結果 1)HMGN3は他のファミリーメンバーと異なり脳や膵臓で発現が高い 。2)HMGN3欠損マウスは糖尿病様の表現型を示す。3)HMGN3は膵臓の内分泌細胞α、β、δ、PP細胞全てにおいて発現している。4)HMGN3をマウス胎児繊維芽細胞(MEF)において過剰発現させても遺伝子発現プロファイルに影響を与えなかったが、マウス膵β細胞由来MIN6細胞に過剰発現させると多くの遺伝子発現に影響を与えた。一方で、HMGN1はMEFにおいて遺伝子発現プロファイルに影響を与えたが、MIN6においてはHMGN3に比べ影響が小さかった。これらのことから、HMGN3は組織・細胞特異的に発現しているが、のみならず、組織・細胞特異的なタンパク質ネットワークの中で機能し、その組織・細胞特異的な機能発現に関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)HMGN3遺伝子欠損マウスが糖尿病様の表現型を示し、かつ、血中インスリン濃度が野生型に比べて有意に低いこと、ならびに膵臓での発現レベルが高いことなどから、HMGN3は膵臓において重要な役割を担っていることが示唆された。そこで、膵臓におけるHMGN3の発現様式を調べる目的で、独自に作成したHMGN3特異的抗体を用いて免疫染色を行った。その結果、他のファミリーメンバーである、HMGN1やHMGN2が膵外分泌細胞ならびに膵内分泌細胞で発現している一方で、HMGN3は内分泌細胞にのみ発現が認められた。さらに、膵内分泌細胞内でのHMGN3の局在を、各細胞種の特異的抗体との二重染色により調べたところ、α、β、δ、PP細胞全てにおいて発現していた。2)HMGN3の膵β細胞における機能を明らかにする目的で、膵β細胞においてHMGN3と相互作用する因子の検索を行った。これまでにFlag-HA-tagを付加したHMGN3を安定的に発現しているマウス膵β細胞由来MIN6細胞株を樹立し、TAP (tandem affinity purification)法により、HMGN3がMIN6細胞内で相互作用する可能性がある因子の検索を行った。3)HMGNファミリータンパク質はクロマチンに結合することにより遺伝子発現制御に関与していることがこれまで示されてきたが、特定のターゲット遺伝子やファミリー間での機能的な重複性は不明である。そこで、組織・細胞特異的な機能発現へのHMGNファミリーメンバーの機能的関わりを明らかにする目的で、独自に作製した遺伝子欠損マウスから作製したMEF、およびそれら細胞にHMGNファミリータンパク質各々を過剰発現させた細胞を用いて、マイクロアレイ解析を行い遺伝子発現プロファイルへのHMGNファミリータンパク質の影響を検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで得られた結果から、HMGN3が他のファミリーメンバーとは異なり、かなり組織・細胞特異的な機能を有していることが示唆される。しかしながら、HMGN3が発現している組織・細胞において他のファミリーメンバーの発現が見られないわけではなく、多くの場合は共発現しているころから、HMGN3特異的な機能解析には細心の注意が必要であると考える。つまり、現在までにHMGN3に相互作用する可能性がある因子を同定できているが、それらが他のファミリーメンバーとの相互作用においてはどうか、あるいは、他の組織・細胞を材料として用いた場合はどうなるかなどを検討する。そのうえで、これまでに得られている各HMGNファミリータンパク質が遺伝子発現制御に関与していると考えられる因子群に関してより詳細な解析を行う。それらの解析結果をもとに、最終的にはHMGN3が膵β細胞においてどのような役割を担っているかを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究に用いる測定機器および設備については、日常的に使用する機器については教室に設置されており、大型機器は本学部付属実験実習機器センターならびに遺伝子実験施設に備わっているものを使用可能なため、大型備品の購入の必要はない。したがって、前年同様に、経費の主要な用途は消耗品である。本研究の主材料は培養細胞なので、培地、ウシ血清、抗生物質、培養用フラスコ、ディッシュ、ピペットなどのプラスティック器具、ガラス器具、抗体やキット試薬類の購入が主である。旅費は、成果を発表し、最先端の情報を収集するための学会参加旅費である。24年度は国際学会での発表を予定している。
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Research Products
(1 results)