2012 Fiscal Year Annual Research Report
マクロファージの遺伝子発現を制御するアポトーシス細胞由来因子の同定
Project/Area Number |
23790330
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山口 裕嗣 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10542970)
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Keywords | アポトーシス / 抗炎症 / アデノシン |
Research Abstract |
アポトーシス細胞の培養上清に含まれる水溶性低分子のメタボローム解析により、マクロファージの遺伝子発現を制御する因子として、AMPを同定した。アポトーシス細胞から放出されたAMPは、マクロファージ上の酵素によりアデノシンに分解された後、アデノシン受容体を介してマクロファージに抗炎症性のシグナルを伝達した。またアポトーシス細胞ではpannexin1チャネルがcaspaseによる切断を受けて開口し、このチャネルを介してAMPが放出されることが分かった。アデノシン受容体遺伝子及びpannexin1チャネル遺伝子を欠損するマウスの腹腔内に酵母細胞壁成分であるzymosanを注射し、急性の腹腔炎を起こさせると、野生型のマウスに比べ炎症が遷延することが分かった。これらの結果より、炎症時に生じるアポトーシス細胞がAMPを放出し、アデノシンとなることによりマクロファージに抗炎症性のシグナルを伝達し、不必要な炎症の遷延を防いでいることが示唆された。 多細胞生物の体内において、アポトーシスを起こした細胞はマクロファージにより貪食処理される。マクロファージによる病原体やネクローシス細胞の貪食処理は炎症反応を惹起するのに対し、アポトーシス細胞の貪食は炎症反応を伴わないことが知られていたが、本研究は、アポトーシス細胞から分泌されるAMPがこのアポトーシス細胞貪食時にみられる抗炎症効果の一端を担っていることを明らかにした。
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