2011 Fiscal Year Research-status Report
制御性T細胞の機能のダイナミズムを制御する分子メカニズムの解明
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23790346
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
関谷 高史 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (80519207)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 炎症性疾患 / CD4T細胞 / 制御性T細胞 / 細胞分化 |
Research Abstract |
本研究は免疫応答の制御において中心的な役割を担う制御性T細胞(Treg)の分化メカニズムや機能を解析することで、免疫疾患発症機構の解明や治療法の開発を目指すものである。前年度までの研究で転写因子Nr4a2がTregを誘導する一方炎症性Th1細胞への分化を抑制することを見出していたが、平成23年度の研究ではそれらの制御の分子機構を明らかとした。まずTh1の抑制に関しては、Nr4a2は転写抑制因子Rcor2と複合体を形成し、Th1細胞の主要なエフェクター因子であるIFN-gの遺伝子領域に脱アセチル化等の不活性化型ヒストン修飾を引き起こすことで、その発現を抑制することを見出した。さらにTregの誘導においてはNr4a2はヒストンアセチル化酵素Tip60と複合体を形成し、Tregの主要な転写因子Foxp3の遺伝子領域にヒストンアセチル化等の活性化型ヒストン修飾を誘導し、その発現誘導を正に制御することを明らかとした。それらRcor2やTip60等の転写共役因子の関与を裏付ける結果として、Rcor2の異所的発現はNr4a2によるTh1抑制を増強し、Tip60の発現はNr4a2によるTregの誘導を促進することを明らかとした。Nr4a2の機能や発現制御によるCD4T細胞の分化調節、ひいては炎症性疾患の治療に手掛かりを与えることを目的とし研究を進めているが、以上の研究成果はNr4a2の機能の分子メカニズムの解明に大きく寄与するのみならず、その機能調節の標的候補因子を見出したという点でも重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Nr4a2はCD4T細胞の分化制御において重要な役割を担っていることを見出していたが、その分子メカニズムは共役因子を含め未解明であった。しかし平成23年度の研究ではその共役因子の一部の同定に成功した。特にTh1分化の抑制におけるRcor2は、そのノックダウンによりNr4a2の機能が大きく失われることから、主要な役割を担っていると考えられる。さらにNr4a2の発現はCD4T細胞分化過程において非常に一過的であり、その機能の解明は困難であると予測されたが、その一過的な発現時にクロマチン修飾を施し、運命決定の足場を作ることを明らかとした。これらの知見はTreg分化の分子メカニズムの解明に大きく寄与すると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
Nr4a2の共役因子としてRcor2およびTip60を同定したが、Tip60に関してはノックダウンにおけるNr4a2機能に対する影響が見られなかったことから、他に重要な共役因子が存在すると予測される。そのため、Nr4a2相互作用因子に関しては、質量分析を取り入れたプロテオーム解析を行い、網羅的に探索を行う予定である。Nr4a2の機能調節による炎症性疾患治療の試みにおいては、Nr4a2タンパク質の機能調節とNr4a2遺伝子の発現調節という2つの観点から進める。Nr4a2タンパク質の機能調節による炎症性疾患治療の試みとしては、Nr4a2の機能を生体内で制御できるマウス個体を作製し、疾患モデルをアプライし解析を行う予定である。Nr4a2タンパク質の機能調節に対するもう一つのアプローチとして、先行研究で見出したNr4a2タンパク質の機能に重要なアミノ酸残基に着目する。このアミノ酸残基はカルボキシル末端に存在する3つのリジン残基であり、その残基に対する修飾の種類の同定、修飾を担う酵素の同定を試みる。Nr4a2遺伝子の発現調節に関しては、Nr4a2遺伝子座のT細胞における転写調節領域をまず同定する。さらに作用するシグナル伝達経路や転写因子の同定を試み、Nr4a2の生体内での発現制御に対する手掛かりを得る。 T細胞特異的Nr4a2欠損マウスの解析は引き続き行い、Tregの免疫抑制作用におけるどの機能にNr4a2が関与しているのか解明を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
Nr4a2共役因子のプロテオーム解析におけるアフィニティ精製試薬(Streptavidin dynabeads, Ni-NTA agarose, ゲル染色試薬等)、消耗品(精製カラム、プレキャストゲル)を含め20万円程度を予定している。目的タンパク質断片の質量分析は外部への受託解析を予定しており、40万円程度を予定している。Nr4a2機能調節の炎症性疾患治療に対する効果を解析するためのマウス個体の購入、飼育、維持費用に20万円程度を予定している。Nr4a2タンパク質修飾の解析、Nr4a2遺伝子発現制御の解析において、DNA修飾酵素、RNA抽出試薬、細胞への遺伝子導入試薬等の試薬類の購入に20万円程度を予定しており、実験用チューブ、チップ類など消耗品の購入に10万円程度を予定している。 研究成果は国内学会、および学術誌での発表を行う予定であり、それぞれ学会旅費に5万円、英文校正に5万円程度を予定している。
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Research Products
(4 results)