2011 Fiscal Year Research-status Report
ヒストンメチル化酵素SETDB1を標的とした抗肥満薬開発のための基盤研究
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23790364
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
橘 敬祐 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (30432446)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | SETDB1 / ヒストンメチル化酵素 / 相互作用解析 / 翻訳後修飾 |
Research Abstract |
本研究課題では、ヒストンメチル化酵素SETDB1に着目し、構造と機能の相関、翻訳後修飾による機能制御機構、および、複合体解析による遺伝子発現制御機構を解明することを目的とする。SETDB1の構造と機能の相関を明らかにするために、まず、今回用いる発現系により得られるタンパク質がヒストンメチル化酵素活性を有するか否かを検討した。N末端側にGSTタグを付加した全長のSETDB1タンパク質を、昆虫細胞Sf9細胞に発現させた。SETDB1タンパク質を回収し、質量分析装置を用いてヒストンメチル化酵素活性を測定した。その結果、メチル化されたヒストンが検出された。以上のことから、本発現系は、酵素活性を有するSETDB1を得ることができる優れた系であることが示された。現在、構造解析を行う領域を決定するため、本発現系を用いてN末端側の領域を順次欠失させたSETDB1タンパク質の発現・精製を行っている。次に、SETDB1の酵素活性には翻訳後修飾が重要であるとの報告があることから、酵素活性に重要なSETドメインの翻訳後修飾を解析した。具体的には、SETドメインのみを発現・精製し、質量分析装置を用いて解析した。その結果、少なくとも5つのセリン残基、および、1つのスレオニン残基がリン酸化修飾を受けることを明らかにした。さらに、SETDB1の機能をその相互作用因子から明らかにするために、抗SETDB1抗体を用いた免疫沈降法の条件検討を行った。その結果、SETDB1と特異的に結合する因子を沈降する溶液の条件を決定できた。以上、今回得られた知見をもとに、SETDB1が酵素活性を発揮するのに必要な領域の特定を行い、その領域を持つタンパク質を精製し構造情報を取得する。また、各種阻害剤などのSETDB1に対する機能への影響や、相互作用因子の同定を行うことで、SETDB1を標的とした薬剤の開発が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昆虫細胞Sf9細胞を用いることで、ヒストンメチル化酵素活性を持つSETDB1タンパク質を得ることに成功した。従って、今後は本発現系を用いてN末端側を順次欠失させた様々なSETDB1タンパク質を発現させることで、SETDB1のどの領域が酵素活性に必要であるかを明らかにすることが可能であり、本研究課題の目的を達成する上で大きな進歩である。一方、質量分析により、酵素活性に重要なSETドメインには、翻訳後修飾を受けるアミノ酸残基がいくつか存在することを明らかにした。これら知見は、翻訳後修飾によるSETDB1の機能制御メカニズムを明らかにできる可能性があり、興味深い結果である。さらに、SETDB1と相互作用する因子を同定するための条件を決定した。本条件をもとに相互作用因子を同定できれば、SETDB1の機能制御の分子機構を解明できることから、本結果は非常に意義深い。
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Strategy for Future Research Activity |
現在まで、計画通り順調に研究が進んでおり、今後も研究計画調書にそって研究を進めていく。具体的には以下のとおりである。1. SETDB1のN末端側を順次欠失させた変異体を発現・精製し、それらのヒストンメチル化酵素活性を検証する。酵素活性を有する最少領域のタンパク質を用いて、精製方法を検討し、構造解析を行う。2. SETDB1の翻訳後修飾が機能に及ぼす影響を解析するため、SETDB1安定発現細胞株を樹立する。それら細胞株に各種シグナル阻害剤・活性化剤を添加した時の機能を解析する。3. SETDB1と相互作用する因子を、免疫沈降および質量分析により同定する。得られる結果から、SETDB1の機能に及ぼす影響を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定通り、SETDB1タンパク質の発現、精製、および物理化学的手法を用いて構造を解析するために、タンパク質の精製・結晶化に必要な器具や試薬を購入する。また、SETDB1の機能を解析する上で、細胞生物学的手法、分子生物学的手法、生化学的手法を駆使したアッセイが必要なため、それらに関わる細胞培養用培地、血清やプラスチック器具、酵素、キット類の試薬の消耗品を購入する。さらに、得られた研究成果を学会で発表するための国内旅費、および、論文投稿料も必要とする。
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