2011 Fiscal Year Research-status Report
急性骨髄性白血病におけるヌクレオフォスミンの新たな機能損失の分子基盤
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23790367
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
坂下 暁介 島根大学, 医学部, 助教 (00397457)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 |
Research Abstract |
S293のリン酸化が、NPM1の細胞内局在に及ぼす影響を検討した。野生型、非リン酸化型およびリン酸化模倣型NPM1遺伝子にFlag-His-EmGFP(FHG)遺伝子を融合した。レトロウイルスベクターを用いてHeLa細胞に導入後、EmGFPの蛍光を指標に細胞をソーティングし安定発現細胞株を樹立した。野生型および変異型FHG-NPM1の細胞内局在を検討したところ、すべて核小体に局在し、変異の影響は認められなかった。また、細胞増殖および細胞周期の進行への影響も認められなかった。NPM1は、N末端領域を介して5量体を形成するが、実際、FHG-NPM1と内在性NPM1との結合が確認された。また、内在性NPM1のタンパク質レベルはFHG-NPM1に比べて約5倍高かった。このため、内在性NPM1との結合により、変異型NPM1の効果が相殺された可能性が考えられた。そこで内在性NPM1の3’UTRに対するsiRNAを用いて、内在性NPM1のみをノックダウンした。しかし、内在性NPM1のタンパク質レベルが半分程度に低下しただけでも、細胞の生存率が著しく低下した。この際、FHG-NPM1のタンパク質レベルは内在性NPM1より低く、変異型NPM1の細胞内局在への影響を検討するのは困難であると判断した。そこで、5量体形成に関わるN末端領域を欠損したNPM1を用いて細胞内局在を検討した。N末端領域を欠損したNPM1の局在はS293の変異の有無に関係なく同じであった。次に、試験管内において蛍光色素標識した全長の組み換えNPM1タンパク質をビーズと混合し培養細胞に加え、物理的衝撃を加えることでNPM1タンパク質を細胞内に導入した。導入したNPM1タンパク質は、S293の変異の有無にかかわらず5分以内に核小体に移行した。以上の結果から、S293のリン酸化はNPM1の細胞内局在に影響しないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究計画は、外来性に導入したNPM1の安定発現細胞株の樹立と、S293のリン酸化の細胞内局在への影響を明らかにすることであった。安定発現細胞株の樹立は予定通り完了したが、S293の細胞内局在への影響に関しては、当初想定していたように、内在性NPM1タンパク質の存在がノイズとなり得るという問題が生じた。そのため、予定通り内在性NPM1タンパク質をノックダウンすることで問題の回避を試みた。しかし、外来性NPM1のタンパク質レベルが予想以上に低かったため、siRNAによる内在性NPM1レベルの低下を量的に相補できずに細胞が死んでしまう、というあらたな問題に直面した。このため、異なるアプローチをとることによってリン酸化と局在の関係を検討することになった。この意味で、現在までのところおおむね順調進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の計画通り、NPM1の結合タンパク質を同定する。特に、急性骨髄性白血病患者で消失しているS293のリン酸化が制御する因子の同定を考え、N末端領域を欠損したNPM1を用いる。外来性NPM1を安定発現するHeLa細胞より、抗Flag抗体、Ni-beads、ゲルろ過を組み合わせてNPM1タンパク質を精製する。結合タンパク質を質量分析により同定し、その結合が直接的か間接的なものか、間接的であればその介在因子を明らかにしていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
遺伝子クローニング、細胞培養およびタンパク質精製に必要な消耗品の購入費用が中心となる。
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