2011 Fiscal Year Research-status Report
ミトコンドリア呼吸鎖活性に依存したアノイキス誘導機構とがん化による破綻
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23790378
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
石川 文博 昭和大学, 薬学部, 助教 (60515667)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 癌 / ミトコンドリア / アノイキス |
Research Abstract |
接着を喪失した乳腺上皮細胞(HMEC)内でミトコンドリア特異的転写因子TFAMの発現が低下することが『接着喪失時に誘導される細胞死(アノイキス)』制御に関与し、がん細胞ではこれらの変化が起こらないこと、TFAM発現抑制によりアノイキス感受性が回復することを見出した。1)ミトコンドリア特異的転写因子TFAM転写活性の脱接着応答機構について これまでにTFAMの発現制御に関わることが知られる転写因子Sp1、NRF1、2、PGC-1αについて、脱接着に応じたTFAMの発現抑制に関与するかどうかについて調べた結果、いずれも関与が認められなかった。また、アノイキスへの関与が示されているERK-BIM経路が関与する可能性について、構成活性化型のMEK2をHMECに導入して検討した結果、脱接着に応答したTFAMの発現抑制に影響を与えなかった。そこで、新たな制御因子を同定するため、TFAM上流配列を用いたレポーターアッセイを行い、脱接着応答配列 (DRE)の絞り込みを行った。その結果、TFAM上流200bp以内にDREの存在が示唆された。2)吸鎖活性低下によるアノイキス促進機構について ミトコンドリア機能障害時に誘導され、細胞死に関与する転写因子として同定したCHOP-10が、HMECに脱接着状態で誘導されるか検討を行った。その結果、ミトコンドリア呼吸鎖複合体の阻害剤とは異なって、脱接着によりCHOP-10の誘導は確認できなかった。従って、TFAMの発現低下により誘導される呼吸鎖活性低下はCHOP-10非依存的にアノイキスを促進している可能性が示された。一方で、HMECで脱接着により発現変化し、かつMDA-MB-231でTFAMをノックダウンした際に発現が変化する遺伝子群を同定するためにcDNAマイクロアレイ解析を行った。その結果、いくつかのアノイキス制御因子候補が同定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度はほぼ実地計画に従って解析を行った。1)ミトコンドリア特異的転写因子TFAM転写活性の脱接着応答機構についてTFAMの脱接着応答性転写制御機構を明らかにするため、これまでに関与が示唆されている因子の関与およびレポーターアッセイによる脱接着応答性配列(DRE)の絞り込みを行った。その結果、既知の転写因子やシグナル経路ではなく新規因子の存在が示唆された。しかし、現段階では関与因子の同定には至っておらず、24年度の課題としたい。2)吸鎖活性低下によるアノイキス促進機構について先ず、以前にミトコンドリア機能不全による細胞死に関与する転写因子として同定したCHOP-10のアノイキスへの関与を検討した。しかし、その関与の可能性は薄いと考えられたため、cDNAマイクロアレイ解析を用いて新規アノイキス制御因子候補の同定を試みた。その結果、いくつかの因子を同定することができたため、進捗状況としては問題ないと思われる。さらに、計画当初は予定していなかったが、脱接着状態での細胞内エネルギー代謝を網羅的に調べるためにメタボローム解析を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
1)ミトコンドリア特異的転写因子TFAM転写活性の脱接着応答機構について引き続きTFAM上流配列を用いて、レポーターアッセイによる脱接着応答性配列(DRE)の絞り込みを行う。最終的に同定したDRE配列を基に、発現制御に関わる転写因子をデータベースもしくはアフィニティー精製および質量分析によって同定する。2)吸鎖活性低下によるアノイキス促進機構について今後はcDNAマイクロアレイ解析から同定された新規アノイキス制御因子候補についてsiRNAを用いた機能的スクリーニングを用いて実際に関与している因子を同定する。その後、同定された因子についてTFAMの発現有無による発現制御機構ならびに細胞死誘導機構を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は脱接着に応じたTFAMの発現制御因子の同定に至らず、予定をしていた同定因子のsiRNAもしくはshRNAによる接着喪失による確認を行うことができなかった。そのため、siRNAやその導入試薬の購入に使用を予定していた研究費を次年度に繰り越すことにする。また、関与が想定されていたCHOP-10の関与が認められなかったため、TFAMによるCHOP-10制御の解析に用いる予定だった研究費を、cDNAマイクロアレイ解析とメタボローム解析から同定された候補遺伝子の解析に充てることにする。
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