2011 Fiscal Year Research-status Report
透析アミロイドーシスにおける骨・関節破壊機構の解明
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23790393
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
大越 忠和 福井大学, 医学部, 助教 (90362037)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 透析アミロイドーシス / β2‐ミクログロブリン / アミロイド線維 / 細胞毒性 |
Research Abstract |
本研究では、試験管内で形成したアミロイド線維と培養細胞を用い、透析アミロイドーシスにおいてβ2-ミクログロブリンアミロイド線維の沈着が破壊性脊椎関節症などの骨・関節破壊を引き起こすメカニズムを明らかにすることを目的とし、培養滑膜細胞を用いて、培養液中にアミロイド線維、あるいはモノマーを添加したときの培養細胞のviability、細胞傷害メカニズムの解析、及び培養上清中に分泌される種々の生理活性物質の測定を行う。 培養液に添加する線維は、患者由来アミロイド線維を超音波破砕し、これを重合核としてリコンビナントモノマーとともにインキュベートすることで線維伸長を行い、増幅したものを使用した。 ウサギ由来滑膜細胞(HIG-82)に対しβ2-mアミロイド線維が濃度依存性に毒性を発揮し、細胞死を引き起こすことを確認した。100μg/mgのアミロイド線維を培養液に添加すると2日後には生細胞数が、コントロールの43%に低下し、MTTアッセイではviabilityが25-64%低下、LDH放出アッセイでは陽性コントロール(100%細胞死)に対し54%のLDH放出を認めた。これらの細胞傷害効果はSDSを用いて伸長させたアミロイド線維でより顕著であった。 アミロイド線維を添加して1日インキュベートし、コンゴーレッド染色を行い共焦点レーザー顕微鏡で観察すると、細胞表面に多量のアミロイド線維が沈着していた。 以上の結果より、沈着したβ2-ミクログロブリンアミロイド線維が滑膜細胞を傷害することが、透析アミロイドーシスにおける骨・関節組織破壊の原因の1つとして推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の計画として、アミロイド線維によるアポトーシス誘導の評価(caspase活性測定、TUNEL染色、及びアポトーシス/ネクローシス蛍光判定キット(Annexin V -EnzoGold/7-AAD-Red)等を使用)、細胞内活性酸素量の測定(活性酸素感受性蛍光試薬CM-H2 DCFAを使用)、細胞内Caイオン量の測定(Caイオン感受性蛍光試薬Fura2-AMを使用)などを行い、細胞傷害のメカニズムを検討する予定となっていたが、アミロイド線維の細胞毒性を評価する段階までにとどまってており、やや遅れていると判断する。 その理由として、MTTアッセイやLDHアッセイなどの実験系の確立に時間を費やしたことと、コンゴーレッド染色及びレーザー顕微鏡による観察を追加したことなどが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、当初の計画で予定していた細胞傷害のメカニズムを検討(アポトーシス誘導の評価)、細胞内活性酸素量の測定、細胞内Caイオン量の測定などを行い、さらにβ2-mアミロイド線維の培養細胞刺激作用を検討する。すなわち、アミロイド線維、あるいはモノマーを添加した培養液中で一定時間インキュベーションの後、培養上清を回収して、上清に含まれるMatrix metalloproteinase(MMP)やelastaseを始めとする組織傷害因子、及びIL-1、IL-6、IL-8、TNF-αなどの炎症性サイトカインなどの種々の生理活性物質をELISA等を用いて測定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
細胞培養に必要な培養液や、プラスチック器具などの消耗品、及び上記実験に必要とする種々の試薬の購入に充てる。
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