2011 Fiscal Year Research-status Report
53BP1核内フォーカスを用いた食道上皮内腫瘍における遺伝子不安定性の特徴解析
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23790406
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
三浦 史郎 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (80513316)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 食道上皮内癌 / ゲノム不安定性 / 53BP1 / 異形成 / 腫瘍マーカー |
Research Abstract |
食道癌化過程におけるゲノム不安定性(GIN)の状態を53BP1核内フォーカス形成の程度を指標に評価し、組織異型度と関連を検討した。食道癌手術症例11例を用い、8例の正常扁平上皮、6例の低異型度上皮内腫瘍(LG-IN)、6例の高異型度上皮内腫瘍(HG-IN)、5例の上皮内癌(CIS)、11例の浸潤癌(SCC)に対し抗53BP1抗体、抗Ki-67抗体による蛍光二重免疫染色を行い、53BP1 フォーカスのパターンを「正常型」「低損傷応答型」「高損傷応答型」「異常型」「大型フォーカス(LF)」「異常型LF」に分類し、各々の発現率を算出、比較検討した。1)53BP1発現率は正常(12.3%)、LG-IN(26.1%)、HG-IN(35.6%)、CIS(32.7%)、SCC(36.6%)と腫瘍進展に伴い、高率に認められた。2)発現パターンでは、異常型において、正常(4.1%)、LG-IN(6.8%)、HG-IN(9.7%)、CIS(12.0%)、SCC(16.4%)と悪性度が増すにつれ、発現率が増加した。3)LFと異常型LFの発現パターンでは、正常(LF:1.0%, 異常型LF:0.5%)やLG-IN(LF:3.3%, 異常型LF:0.5%)ではほとんど見られないのに対し、HG-IN (LF:13.6%, 異常型LF:3.6%)、 CIS(LF:12.0%, 異常型LF:11.9%)、SCC(LF:13.0%, 異常型LF:4.2%)で高率に認められた。発現パターンでは異常型の発現率が腫瘍進展過程におけるGINと悪性度との相関をよく表していた。53BP1核内フォーカスパターンの解析は、ki-67と組み合わせることで食道上皮内腫瘍のGINレベルを推定する指標となり、特に異常型の発現解析は組織学的鑑別診断に有用な新規腫瘍マーカーとなることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
食道の上皮内腫瘍化過程において、特にLG-IN, HG-IN, CISの3つの鑑別が病理組織学的には困難な場合があり、治療法にも影響する。本研究結果では、53BP1とki67の二重免疫染色による発現パターンで比較検討したところ、異常型パターン(53BP1のフォーカスが3個以上で、ki-67陽性)の発現率が、LG-IN,HG-IN,CISで次第に増加していることが見出せた。また、LG-IN以下とHG-IN以上では、フォーカスの大きさ(LF)に明確な違いがあることも判明した。本研究の目的である食道上皮内腫瘍の癌化過程におけるGIN状態を53BP1発現パターンで解析し、新規腫瘍組織マーカーとしての可能性があることを示唆しており、おおむね順調に進展しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の目的に沿う結果の傾向がみられるものの、統計学的な解析に足る症例数確保のため、もう少し各症例の例数を増やす必要があり、現在進行中である。また、組織異型度の別の指標として、p53の免疫染色も追加し、異型度との相関を補助的指標として確認する必要があると思われる。手術例での解析が終われば、生検検体での実際的な鑑別に有用かどうかの実験を行う必要があると思われる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
症例数の増加に伴う標本作製費、抗体費、及び学会発表(日本病理学会総会で発表予定)、論文制作費で使用予定である。
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Research Products
(27 results)