2012 Fiscal Year Annual Research Report
53BP1核内フォーカスを用いた食道上皮内腫瘍における遺伝子不安定性の特徴解析
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23790406
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
三浦 史郎 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (80513316)
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Keywords | 食道上皮内癌 / ゲノム不安定性 / 53BP1 / 異形成 / 腫瘍マーカー |
Research Abstract |
多くの腫瘍化過程にはゲノム不安定性(GIN)が関与し、悪性度と相関する。食道がん化過程におけるGINの発現意義について解析した。GINの指標として、53BP1というDNA二重鎖切断部位に集簇する蛋白を用いた。 1) 食道上皮がん化過程における53BP1の発現率は、正常扁平上皮(23%)、軽度異形成:LG-IN(34.7%)、高度異形成:HG-IN(34.3%)、上皮内癌:CIS(35%)、扁平上皮癌(SCC)表層部(38.8%)と異型度が増すにつれ、発現率の上昇が見られた。また、SCC深層(浸潤深部)では、24.6%と発現率が低下した。 2) 53BP1のフォーカスの数やKi67との発現の組合せによる発現型では、低損傷応答型、異常型、大型フォーカス(LF)、異常型LF において、異型度が増すにつれ、各割合が増加する傾向が見られ、腫瘍進展過程におけるゲノム不安定性と悪性度との相関をよく表しているものと思われる。発現型のLFと異常型LFでは、LG-IN以下とHG-IN以上との間に差が見られ、鑑別因子として有用である可能性が示唆される。また、正常上皮~SCC(表層)までの腫瘍進展過程においては、53BP1の発現パターンによる各群の相関が確認できたが、SCC(深層)における53BP1の発現率は高度に低下していた。これは、浸潤癌細胞におけるゲノム修復過程の異常を意味しているのかもしれない。 まとめ:蛍光免疫染色による 53BP1 核内フォーカスパターンの解析は、増殖マーカーの ki67 との発現を組み合わせることで、食道上皮内腫瘍のゲノム不安定性レベルを推定する指標となり、悪性度と相関する。LG-IN以下とHG-IN以上では、ゲノム不安定性レベルに違いがあることから、組織学的鑑別が重要と考えられる。53BP1は食道上皮内腫瘍の組織学的鑑別診断に有用な新規腫瘍マーカーとなることが示唆される。
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Research Products
(19 results)