2012 Fiscal Year Annual Research Report
アレイCGH法による粘膜下浸潤胃癌におけるゲノムコピー数異常の網羅的解析
Project/Area Number |
23790409
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
黒田 明子 大分大学, 医学部, 医員 (10508857)
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Keywords | 胃癌 / アレイCGH / 粘膜下浸潤胃癌 / クローナルエボリューション |
Research Abstract |
胃癌はわが国の癌死亡率の第二位をしめる重要な疾患である。癌が粘膜内にとどまった状態であれば内視鏡的に切除することが可能となり、近年治療成績は向上している。しかし一旦粘膜下筋板を越えて粘膜下に浸潤するとリンパ節転移の確率が上昇し、治療成績も増悪する。そのため、粘膜下浸潤及びリンパ節転移に関わるメカニズムの解明が重要である。癌は遺伝子異常の蓄積によって引き起こされる遺伝子病であると考えられており、異常遺伝子を標的とした治療薬を用いた分子標的治療が進歩している。各臓器癌の治療薬を開発するには、その臓器癌の異常遺伝子を同定しなければならない。我々はこれまで既にアレイCGH法により進行胃癌と、粘膜内癌のゲノムコピー数異常を網羅的に解析した。 昨年度、私は粘膜下浸潤胃癌において11q、14q、17q21のゲノム増幅がリンパ節転移症例で有意に高頻度に検出されることを報告した。本年度はさらに個々の症例におけるゲノム異常について粘膜内部分と粘膜下部分を比較した。当初、我々はゲノム異常の数は粘膜内部分より粘膜下浸潤部分の方が多いと予想していたが、個々の症例についてゲノム異常の数を比較してみたところ、23症例中11症例では粘膜下浸潤部分でのゲノム異常数の増加が認められたが、別の11症例では逆に減少しており、粘膜下浸潤に必ずしもゲノム異常の付加が必要ではないことが明らかとなった。興味深いことに、粘膜内で検出されたゲノム異常の中には粘膜下層で検出されないものも含まれていた。つまり、粘膜内には複数の細胞集団が含まれており、限られた細胞が粘膜下へ浸潤しそこで新たな細胞集団を形成することが示唆された。本年度の研究成果より私は胃癌の粘膜下浸潤におけるクローナルエボリューションモデルを提唱した。現在クローナルエボリューションモデルを証明するため症例数を増やし、1症例につき複数箇所のゲノム解析を行っている。
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