2012 Fiscal Year Research-status Report
ヒト肝癌転移モデルを用いた分子標的治療薬の機能解明
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23790421
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
杜 ぶん林 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (90348798)
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Keywords | 肝細胞癌 / 分子標的治療薬 |
Research Abstract |
Sorafenibなど多標的チロシンキナーゼ阻害薬は肝細胞癌において、従来の抗癌剤より良い効果が得られたと報告されたが、腫瘍の浸潤・転移など複雑な生物学的現象に与える影響や機能について解明されていないところが多い。本研究では、ヒト肝細胞癌株と肝細胞癌の進行症例に相当する肝細胞癌転移モデルを用いて、分子標的薬の癌の進展に与える影響とその機序について解明し、分子標的薬の治療効果予測バイオマーカーの探索を目的とする。 平成23年度では、sorafenibのin vitro, in vivoにおいて各肝細胞癌株(KYN2, Li7, HepG2, KIM1, PLC/PRF/5)に対する影響について研究し、sorafenib使用の臨床症例について検討した。In vitroでは、sorafenibによる増殖抑制効果の違う2群間(KYN2, HepG2, KIM1>PLC/PRF5, Li7)は、DNA microarrayでは、2群間にIRS1, FGFR3, FGFR4, ERBB3, LYNにおいて有意差が認められた。Western blottingの結果、KYN2においてLYN、IRS-1のリン酸化はsorafenib添加によって減少するが、Li7においては変化がみられない。In vivoでは、sorafenib投与により、KYN2のマウス肝内転移抑制傾向と生存期間延長がみられ、KYN2とLi7間にCK19, FGFR4の発現に差が認められた。Sorafenib投与の肝細胞癌臨床例について検討した結果、有効例では、腫瘍内と非腫瘍部の血管内皮障害が認められた。現在、sorafenibによる肝細胞癌肝内転移抑制機序について、各タンパクの発現、リン酸化を中心に臨床症例も用いて検討中であり、sorafenibの肝細胞癌における治療効果の予測マーカーと効果判定への応用が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
in vitro実験では、運動能効果解析、各分子の発現、リン酸化の検討に若干の遅れが出ており、実験手技の未熟、試薬の不適合に原因がある。In vivo実験では、転移モデル作製手技が困難であり、試薬が大量必要のため、有効な実験数がまだ少なく、正確な実験結果を出すのに遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
in vitroでは、western blottingや免疫沈降などで分子標的薬添加による変化を有する発現分子の解析を進み、候補分子を増やす。invivo実験では、実験数を増やし、実験モデルにおける各候補分子の発現、リン酸化を検討する。臨床症例を引き続き病理組織学的に解析し、臨床検体における候補分子の発現、リン酸化状況を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
未使用額の発生は平成23年度に効率的な物品調達をおこなった結果であり、平成25年度消耗品購入にあてる予定である。 平成25年度の研究費は分子発現、リン酸化を解析するための細胞培養試薬、抗体、遺伝子増幅試薬、プライマー、蛍光染色を含む各染色試薬など各種の試薬と器具の費用、in vivo実験のためのマウス飼育関連費用及び研究発表のための旅費に使用する予定である。
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