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2011 Fiscal Year Research-status Report

周囲組織環境との相互作用によるATL細胞のサバイバル機序の解明

Research Project

Project/Area Number 23790430
Research InstitutionHokkaido University

Principal Investigator

宮武 由甲子  北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10421984)

Project Period (FY) 2011-04-28 – 2013-03-31
Keywords国際情報交流
Research Abstract

成人T細胞白血病(ATL)は、非常に強い臓器浸潤性や化学療法抵抗性により、未だ有効な治療法が確立されていない我が国における極めて予後不良な白血病の一つである。本研究では、上皮細胞や線維芽細胞のような間質系細胞への接着によるATL細胞の細胞死の回避を決定づける分子メカニズムを解明し、ATL細胞とその周囲組織環境との相互作用の阻止を考慮した新しいATL治療コンセプトの確立を目的とする。 ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-I)感染者のうち約4%の感染者が、長い潜伏期間を経て成人T細胞白血病(ATL)を発症する。ウイルスの遺伝子サイレンシングは無症候性キャリアのみならず、ATL患者でも認められることから、ATL細胞が宿主免疫機構から逃れて持続潜伏することに関与していると考えられている。しかし、それに導くメカニズムには不明な点が多い。 我々は、上皮細胞にはATL細胞との接着によって、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤によって誘導されるウイルス転写の賦活化といったATL細胞におけるエピジェネティックな変化を抑制し、それによって誘導される細胞死からATL細胞を保護する働きがあることを見出した。さらに、ATL細胞に対するナチュラルキラー(NK)細胞の細胞傷害能が上皮細胞との共培養によって低下することを確認した。また、上皮細胞に接着したATL細胞は、非接着ATL細胞に比べて、がん幹細胞マーカーとして知られるCD44の発現の亢進を認め、細胞周期静止状態(quiescence)にあることを明らかとした。 このような上皮細胞に備わる宿主保護のためと推測される潜在能力は、ATL細胞のウイルスの遺伝子サイレンシング、宿主免疫逃避、およびがん幹細胞様の細胞静止状態に関与し、結果的にATLの病態の進展を助長している可能性が示唆された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

1: Research has progressed more than it was originally planned.

Reason

我々は、上皮細胞のような間質系細胞にはATL細胞との接着によって、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤によって誘導されるウイルス転写の賦活化といったATL細胞におけるエピジェネティックな変化を抑制し、それによって誘導される細胞死からATL細胞を保護する働きがあることを見出した。さらに、ATL細胞に対するナチュラルキラー(NK)細胞の細胞傷害能が上皮細胞との共培養によって低下することを確認した。さらに、上皮細胞に接着したATL細胞において、非接着ATL細胞に比べて、細胞周期のG0/G1期の蓄積、リンパ球の活性化マーカーであるCD25の発現の抑制、がん幹細胞マーカーであるCD44の発現の亢進が認められた。 これらの結果は、上皮細胞に接着したATL細胞は、非接着細胞よりも、より細胞静止状態(quiescence)にあることを示唆するものと考える。これらの発見は、末梢においてATL細胞が上皮系細胞に接着することにより、がん幹細胞様のDormantな細胞状態に誘導されることを示唆していると考える。このことは、ATLのみならず白血病などの悪性腫瘍に対して、細胞静止状態による癌化学療法抵抗性などのメカニズムの解明、その克服にも十分期待できると考える。

Strategy for Future Research Activity

これまでの研究によって、ATL細胞の末梢におけるがん幹細胞様細胞化が、上皮細胞との接触による細胞間相互作用によって誘導されることが強く示唆された。実際、ATLの癌幹細胞の表現型を示す細胞はin vivo において報告されていることからしても、がん幹細胞様細胞は、ATLの治療抵抗性に深く関与していることが予想される。我々の発見は、ATLの病態における、末梢でのATL細胞のがん幹細胞様細胞化のメカニズムの解明、さらには、ATL患者における化学療法抵抗性を回避するためのメカニズムの解明にも繋がると考えている。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

今年度に予定していた様々な抗体を用いたATL細胞-上皮細胞の細胞間相互作用のメカニズムに関する分子の網羅的な検討は、次年度に行うこととなったため、23年度の助成金は次年度にまとめて使用する。また次年度の研究費は、今までに蓄積されたデータをまとめて論文として報告し、また学会等で成果を報告することに使用する。さらに、ATL細胞-上皮細胞の細胞間相互作用に関与する分子メカニズムをより詳細に解析し、上皮-ATL細胞間相互作用を阻止することによってATL治療抵抗性を回避させる機序を解明すべく、新たな抗体、細胞株、試薬、細胞培養関連消耗品、解析キットなどを購入する予定である。

  • Research Products

    (4 results)

All 2011

All Presentation (4 results)

  • [Presentation] ATL細胞と上皮細胞との細胞間相互作用における新しい作用2011

    • Author(s)
      宮武 由甲子
    • Organizer
      第4回HTLV-1研究会
    • Place of Presentation
      東京大学、東京
    • Year and Date
      2011年9月18日
  • [Presentation] ATL細胞と上皮細胞との細胞間相互作用における新しい作用2011

    • Author(s)
      宮武 由甲子
    • Organizer
      第25回国際比較白血病学会
    • Place of Presentation
      東京大学、東京
    • Year and Date
      2011年9月15日
  • [Presentation] 間質細胞はHDAC阻害剤によって誘導されるアポトーシスを回避を助ける2011

    • Author(s)
      宮武 由甲子
    • Organizer
      第15回国際レトロウイルス学会
    • Place of Presentation
      ルーベン大学、ベルギー
    • Year and Date
      2011年6月4日
  • [Presentation] HTLV-1持続潜伏感性における上皮系細胞の役割2011

    • Author(s)
      宮武 由甲子
    • Organizer
      第40回日本免疫学会学術集会
    • Place of Presentation
      幕張メッセ、千葉
    • Year and Date
      2011年11月27日

URL: 

Published: 2013-07-10  

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