2011 Fiscal Year Research-status Report
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23790433
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
狩野 光伸 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80447383)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ナノテクノロジー / 血管壁細胞 |
Research Abstract |
23年度は、新生血管においてのみ高い発現が見られ、内皮細胞―壁細胞の安定化に重要であることが示唆されている分子V*(現段階で名称公表不可、以下同様)に着目して解析を行った。その結果、BxPC3ヒト膵癌皮下腫瘍モデルにおいて、TGFβ阻害を行った個体ではV*陽性血管が減少し、さらに血管におけるV*染色性とナノ粒子の腫瘍内貯留が逆相関する可能性を見出した。これまで、内皮細胞間の細胞間接着にはClaudin5とVE-cadherinなどが、また血管内皮細胞―壁細胞間の細胞間接着を担う分子としては、主にN-cadherinが注目されてきたが、本研究の結果から、これらに加えてV*分子がナノ粒子漏出性の機能的マーカーとなる可能性が示唆された。 その発現制御メカニズムを明らかにするために、in vitroモデル細胞としてマウス内皮細胞MS1を用いた解析の結果、TGFβシグナル依存的にV*のmRNA・タンパク質発現が上昇する結果を得た。この発現変化は、播種密度およびTGFβ刺激時間により差がみられ、V*発現制御は内皮細胞のおかれる局所環境により精密に制御されていると考えられる。 これらの知見から、TGFβ阻害により増強する漏出性はV*の発現低下により説明され、すなわちV*が新生血管における漏出性を規定する接着分子である可能性が示唆されてきた。 これらと並行し、ヒト腫瘍病理標本を用いて、膵癌、胃癌(通常・スキルス)、大腸癌、卵巣癌において壁細胞被覆程度を免疫染色によって解析し、膵癌・スキルス胃癌は壁細胞被覆が多く、他は少ないことが示された。この結果は、これら腫瘍の難治性の程度と相関しており、腫瘍難治性が薬剤送達性によっても影響されていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は新規実験系を用いることで、壁細胞被覆と関連した漏出性と血管構築との関連性についてその分子基盤を明らかにする計画で進行させている。予備的検討から漏出性を減少させることが知られるclaudin5の発現レベルが単純な壁細胞被覆程度とは相関しないことを見出している。従って、内皮細胞と壁細胞との接着に関してより詳細な解析・評価を行い、claudin5の発現レベルとの相関を見出すことが必要であると考えている。 23年度の検討の結果、前述の通り内皮―壁細胞間の接着安定化に重要であると報告されている分子V*が、腫瘍血管における漏出性に関連する可能性が示唆された。V*は、これまでに、安定化した既存血管では発現が低く、新生血管においてのみ壁細胞との接着に関与していることが報告されている。 本研究で23年度に得られた知見と合わせると、内皮細胞と壁細胞との接着状態は段階的に推移し、その段階によって内皮細胞間のタイトジャンクション、すなわちclaudin5の発現量の多寡や漏出性が変化するのではないかと推測される。 このように、内皮細胞と壁細胞の接着性推移を担いうるV*が漏出性と相関している可能性を見出したことにより、内皮細胞間のタイトジャンクション形成制御に関して新たな視点を得たため、次年度以降の研究推進に十分な結果を得たと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
漏出性の評価に用いられているトランズウェルインサート上で、積層培養を利用して内皮細胞と壁細胞の3次元培養を行い、両者の直接接着を実現した in vitroモデルを構築する。この新規in vitroモデルを用い、実際に分子V*が内皮細胞と壁細胞の接着に関与することを確認する。さらにV*中和抗体を用いてV*を阻害し、この状態で漏出性試験を行い、V*が血管漏出性に寄与しうるかどうか機能的な評価を行う。 また並行して、内皮細胞におけるV*の発現量と、壁細胞の接着に関して時間的推移の知見を得る。 これらの検討において、同時にタイトジャンクション分子の発現量に関しても評価を行い、壁細胞との接着状態と、内皮細胞間タイトジャンクションの相関に関して新たな知見を見出す予定である。細胞モデルとしては、新規腫瘍モデルに用いたMS1と10T1/2を用いることで、in vivoモデルとの関連付けを行っていく。 また、これらの検討において、内皮細胞としてMS1以外、壁細胞として10T1/2以外のヒト由来細胞株を用いることが可能であるかどうかを検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、前述の通り、各種細胞を共培養・三次元培養し、分子生物学的、あるいは中和抗体などを用いて薬理学的に解析を進めることで研究を推進する。したがって、次年度研究費は、細胞培養株入手費用、細胞培養液購入費用、細胞培養器具購入費用、PCR用プライマー購入費用、各種抗体を含む試薬購入費用などに充てることを計画している。
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Research Products
(2 results)