2012 Fiscal Year Annual Research Report
セントロメア低機能性マウスを用いた発がん機構の解明
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23790435
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Research Institution | Chiba Cancer Center (Research Institute) |
Principal Investigator |
奥村 和弘 千葉県がんセンター(研究所), 発がん研究グループ実験動物研究室, 研究員 (80584680)
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Keywords | セントロメア / Cenpr / ノックアウトマウス / DMBA-TPA |
Research Abstract |
これまで染色体機能異常とがんの悪性化との間には密接な関係があると考えられてきた。しかし、その関係性を個体レベルで解析した報告はほとんどない。その要因として生命維持に重要であるこれらの機構に関する生育可能な遺伝子改変動物の作製が困難であったことが挙げられる。しかしながら我々は最近、セントロメア低機能性変異マウスの作製に成功した。そこで、本研究はセントロメア構成タンパク質であるCenprノックアウトマウス(Cenpr-/-)を用いて発がん実験を行うことで染色体機能異常と発がん機構との関連性を個体レベルで実証することを目的とした。本研究では、DMBA-TPAを用いた多段階皮膚発がん誘導を行った。その結果、DMBA処理後20週目の平均良性腫瘍数において有意な差は認められなかった。しかしながら、その発がんスペクトラムは全く異なっており、腫瘍サイズの直径別(<2mm、2-6mmおよび>6mm)に解析を行った結果、Cenpr-/-は<2mmの腫瘍が有意に多く、2-6mmのサイズの腫瘍ではCenpr+/+と差がなかった。>6mmの腫瘍においてはむしろCenpr+/+の方がCenpr-/-より多い傾向を示した。さらに興味深いことに扁平上皮がんの発生率においては38週目においてCenpr-/-が10.0%であったのに対し、Cenpr+/+が46.6%と有意に高かった。これらのことから、Cenprは良性腫瘍の発生初期においてはがん抑制的に機能し、後期良性腫瘍から悪性腫瘍においては、その機構ががん促進的に機能することが示唆された。このような機構は、Tgfβなどの分子と類似した傾向であり、セントロメア蛋白質ががんの発生機構に関連することを個体レベルで証明することができた。今後は、他のセントロメア蛋白質の解析とともに、良性腫瘍および悪性腫瘍におけるCenprの機能解析を行うことが重要である。
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