2011 Fiscal Year Research-status Report
好塩基球のサイトカイン産生と2型免疫応答発動に関与するシグナル伝達経路の制御機構
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23790438
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
山条 秀樹 信州大学, 医学系研究科, 助教 (50391967)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 好塩基球 / サイトカイン / シグナル伝達 |
Research Abstract |
本研究では2型免疫応答への関与が示唆される好塩基球の活性化とサイトカイン産生の調節機構について、サイトカインシグナル伝達における「可逆的スイッチング」という新たな機構を提唱しその作動機序を分子レベルで解明することを目的としている。今年度は、その解明の手がかりとして IL-3刺激前後の好塩基球からmRNAを調整し、これを材料にして DNAマイクロアレイ解析を行った。その結果IL-3刺激前後で遺伝子発現の変動の見られる遺伝子群(刺激後に2~20倍の発現上昇、または刺激後に2~20倍の発現減少)が多数認められた(それぞれ約500遺伝子)。この中には既に報告されているIL-3誘導遺伝子も複数認められたことから、実験の成立が確認された。一方で、これまでに報告されていない遺伝子も複数認められた。この事はこれらの遺伝子産物が好塩基球特異的な役割に寄与する可能性を提示しており、今後の好塩基球を用いた研究を行っていく上で有用な情報を入手できたものと言える。現在これらの中からシグナル伝達経路に関与することが期待される遺伝子群について整理し、順次遺伝子クローニングを行い、レトロウイルス発現ベクターを作製しスクリーニングの準備に取りかかっているところである。次に好塩基球の可逆的スイッチング機構におけるNF-κB経路の影響について検討を行った。阻害剤を用いたNF-κB経路の遮断は好塩基球の可逆的スイッチング機構に影響を及ぼさなかった。IL-3シグナル伝達は現在までにIL-3Rα/β鎖を介しJAK2-STAT5というシグナル伝達分子群によって規定されていることが明らかになっているが、上記の制御機構においてもやはりJAK2-STAT5の経路が重要な役割を果たしていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DNAマイクロアレイ解析の結果は、現在行っているスクリーニングにおける候補遺伝子の絞り込み作業に多大に貢献しており、これは実験計画で記載したように充分想定されたところでもある。特筆すべきは、これまでに報告されていなかったIL-3誘導遺伝子も多数認められたところにあり、この知見に基づく標的遺伝子産物の解析は、当該研究の目的である可逆的スイッチング機構を司る遺伝子の同定だけに留まらず、まだ判明していない好塩基球の活性化、サイトカイン産生の正負の制御機構の解明に関与する可能性が充分考えられ、好塩基球の研究分野の発展に寄与するものと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の成果をもとに、次年度は候補遺伝子の絞り込みを行うためスクリーニングを行っていく。そのために候補遺伝子のクローニング、発現ベクターを作製し、好塩基球に遺伝子導入する。遺伝子導入の結果予想される性質変化(特にサイトカイン産生能の獲得)を指標にスクリーニングを行い、候補遺伝子の特定を目指す。遺伝子特定に成功すれば、平成24年度実施計画にも挙げた様に、short hairpin RNAを用いたgene knockdown、またloss-of-function mutantを同定、利用することにより、好塩基球の可逆的スイッチング機構における当該遺伝子産物の機能を探る。また可能ならば、遺伝子改変マウス(ノックアウトマウス、トランスジェニックマウス等)を用いて、この機構の生理的な意義について評価検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は計画していたよりも少額の研究費使用(主に物品費)となったが、これは DNAマイクロアレイの解析結果を詳細に分析し、整理するためにある程度の時間を要し消耗品の購入をさほど行わなかったためである。既に開始しているが、次年度はこれらの解析結果をもとに候補遺伝子特定のため網羅的にスクリーニングを行っていく予定であり、そのために今年度未使用の研究費と合わせて次年度の研究費は、主にスクリーニングに必要な実験を行うための消耗品購入に使用される予定である。また今年度に引き続き、次年度も関連学会等に参加するため、そのための旅費に使用される予定である。
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