2012 Fiscal Year Annual Research Report
好塩基球のサイトカイン産生と2型免疫応答発動に関与するシグナル伝達経路の制御機構
Project/Area Number |
23790438
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
山条 秀樹 信州大学, 医学部, 助教 (50391967)
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Keywords | 好塩基球 / サイトカイン / シグナル伝達 |
Research Abstract |
最終年度は、前年度に行ったDNAマイクロアレイの結果から機構解明の手掛かりとなりうる候補遺伝子群を選択し、レトロウイルスシステムを用いてマウス骨髄由来培養好塩基球に遺伝子導入を行い、休止期好塩基球におけるFcεRI架橋によるサイトカイン産生誘導獲得能について検討した。スクリーニングの結果、当初考えていたシグナル伝達経路を制御する候補遺伝子産物の特定には至らなかったものの、生化学的な解析から興味深い知見を得た。休止期好塩基球並びにIL-3活性化好塩基球を準備しFcεRIシグナル伝達経路に関与する分子群について比較検討したところ、休止期好塩基球では活性化好塩基球と較べてシグナル伝達分子群(Syk、PLCγ2、IKKなど)のタンパクレベルの著明な発現低下が認められた。さらに休止期好塩基球のIL-3あるいはFcεRI架橋による刺激でこれらの分子群のタンパクレベルの発現増加が認められた。またマイクロアレイ解析から、転写抑制因子Bcl6について検討したところ、対照活性化好塩基球に対し、Bcl6を過剰発現する活性化好塩基球はFcεRI架橋による刺激により、IL-4を産生誘導することができなかった。これらのことから1) 休止期好塩基球は、シグナル伝達分子群の発現レベルを調節することでFcεRIからのシグナル伝達を抑止している、2) 休止期好塩基球がIL-3刺激により活性化されるとシグナル伝達分子群のタンパクレベルの増加を促し、FcεRI架橋によるサイトカイン産生の誘導を可能にする、3) 休止期好塩基球では、転写抑制因子Bcl6により、FcεRI架橋によるサイトカイン産生誘導を負に制御している、という複数の機構の存在が示唆された。これらの新規の知見は、生体内で起こる免疫応答において好塩基球が果たす役割を考察し理解する上での一助となることが期待される。
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Research Products
(3 results)