2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23790449
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
内木 綾 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20509236)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ギャップ結合 / 肝発がん / 動物モデル |
Research Abstract |
肝癌は、炎症等の細胞障害を背景に発生することが報告されているが、そのメカニズムに未だ不明な点が存在する。そこで本研究は、肝障害時の細胞がん化に寄与する機構を解明することを目的とし、本年度は動物モデルの作製と肝障害時の遺伝子発現変化の解析を主に行った。1.肝細胞の障害から発がん過程を模倣するモデル作製と肝障害、前癌病変の評価以前に我々が開発したCx32ドミナントネガティブトランスジェニック(Tg)ラットは、肝ギャップ結合能が低下し、発がん物質に対して高感受性を示す。Tgおよび野生型ラットにAcetaminophen (APAP)を投与し肝細胞障害を誘発した後、肝発がん物質Diethylnitrosamine (DEN)を投与し、APAPによる肝障害発現とGST-P免疫染色における陽性細胞巣の解析を行った。その結果、APAP投与群では小葉中心性肝細胞死が観察され、野生型ラットと比較してTgラットでは肝細胞死の抑制傾向を認めた。一方でDEN投与によるGST-P陽性領域形成は、Tgおよび野生型ラットいずれにおいても無処置群と比較しAPAP投与群で増大を認め、Tgによりその傾向が顕著であった。2.ラット肝障害時のmRNAおよびmicroRNA発現変化の解析 以上よりギャップ結合機能の低下状態では、障害肝細胞に対する細胞死誘導が阻害され、その結果発がん物質に対する感受性が上昇することが示唆された。そこで、Tgおよび野生型ラットのAPAP投与群、無処置対照群の肝組織をサンプルとして、mRNAおよびmicroRNAに対するマイクロアレイ解析を行い、APAP誘発肝障害時の遺伝子変化を検討した。その結果、APAP投与群で野生型と比較しTgラットで2倍以上発現変動のあったmRNAおよびmicroRNAを同定した。今後はこれらの遺伝子の肝癌における機能解析をヒトおよびラット肝癌細胞株を用いて行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は2年間で行う研究であるが、初年度にあたる平成23年度の研究は、ほぼ計画スケジュール通りに実施できた。また研究結果に関して、計画時に予想した通りの結果を得られている。以上の点から、次年度以降の研究を計画通りに実施できる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.肝細胞株を用いた肝発がんを制御する新規候補因子の機能解析 平成23年度に得られた遺伝子発現変化の結果を基にして、肝癌細胞株を用いた肝発がんを制御する新規候補因子の機能解析を行う。肝細胞障害時にmRNAおよびmicroRNA発現変化の見られた遺伝子群が、肝細胞のがん化に寄与する機構を解明するために、当研究室で樹立されたラット肝癌細胞株C6およびヒト肝癌細胞株 HepG2に対し、RNAi技術によるmRNAおよびmicroRNA発現抑制系を導入する。肝癌細胞の増殖能、細胞周期および細胞死への影響を観察し、その遺伝子の働きを解明する。2.肝細胞間コミュニケーションを介するmicroRNAの同定 ギャップ結合は、その他の細胞間伝達機構と異なり、隣接細胞とイオン、セカンドメッセンジャーなどの小分子の交換を行う。microRNAはギャップ結合を通過すると考えられているが、これまでの研究ではギャップ結合を介するmicroRNAの機能は明らかにされていない。そこで本研究では、平成23年度に同定したmicroRNA発現を、Cx32ΔTgおよびWildラットの肝において比較検討し、細胞間コミュニケーションに関連したmicroRNAの機能解析を試みる。また、ラット肝癌細胞株において、我々は以前にCx32発現株を樹立しており(未発表)、親株とCx32高発現肝癌細胞株の両者を用い、ギャップ結合がmicroRNA発現やがん細胞の増殖に与える影響を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度に計画していたマイクロアレイ解析のための費用が計画時よりも安価となったため、計画通りに解析を実施したが約360,000円の未使用金が発生した。従って、次年度は未使用研究費を利用して、計画当初の研究をより詳細に遂行するとともに、ラット肝細胞障害部におけるタンパク発現変化を免疫組織学的に解析する予定である。また、学会発表や学術誌投稿による研究発表に対する費用として役立てたい。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Silencing of connexin 43 suppresses invasion, migration and lung metastasis of rat hepatocellular carcinoma cells.2012
Author(s)
Ogawa K, Pitchakarn P, Suzuki S, Chewonarin T, Tang M, Takahashi S, Naiki-Ito A, Sato S, Takahashi S, Asamoto M, Shirai T.
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Journal Title
Cancer Sci.
Volume: 103(5)
Pages: 860-867
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] TANK-binding kinase 1 (TBK1) controls cell survival through PAI-2/serpinB2 and transglutaminase 2.2012
Author(s)
Delhase M, Kim SY, Lee H, Naiki-Ito A, Chen Y, Ahn ER, Murata K, Kim SJ, Lautsch N, Kobayashi KS, Shirai T, Karin M, Nakanishi M
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Journal Title
Proc Natl Acad Sci U S A.
Volume: 109(4)
Pages: 177-186
DOI
Peer Reviewed
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